ベトナム
2016年2月1日 中安昭人

共存共栄を目指して
ベトナム人経営者から日本企業・日本人への苦言・提言

日本で15年間の編集者生活を送った後、ベトナムに渡って起業した中安さんのベトナムレポート。ベトナム人経営者たちは日本および日本人をどう見ているのか。日々、日本への期待は高まるばかりだが、共存共栄を望むからこそ、厳しい意見も……。 海外でビジネスをする際には、ぜひ参考に。

 昨年のこと、ホーチミンシティの「CEO LINK」というサークルの会合で、1時間ほど、話をする機会をいただいた。これは、その名の通りCEO、つまりベトナム人の会社経営者ばかりが集まっている組織である。

 私自身は、確かに会社の代表ではあるが、個人事業者のようなもの。経営者と自称するのはおこがましいが、当地で活動している日本企業の経営者の方々とのお付き合いはある。そういった方々から聞いている「ベトナム企業との付き合いで困っていること」を、ベトナム人経営者の方に伝えることで、ベトナム企業と日本企業が、よりよい関係を築いていく一助になればと思い、お引き受けすることにした。

 私が日本企業側の話をひとしきりした後、会場の方々に「皆さんにとって、日本企業、日本人とのビジネスは、どんなところがやりにくいですか?」と質問を振ってみた。そこで出てきた発言は、いずれも興味深く、かつ耳が痛いものばかりだった。

 ベトナムだけではなく、海外で事業をされている方々にとっても、参考になる話だと思うので、ここで紹介してみたい。

日本企業は決断が遅い!?

 まず出てきたのが「日本企業は決断が遅い」という指摘。これは、当地でビジネスをしていると、いろんなところで耳にする不満だ。「慎重に検討するのが大切なのは分かるけど、それにしても決定が遅すぎ」「パートナーの日本企業が検討しているのを待たされている間に、ビジネスチャンスがどんどん逃げていく」という声は、私自身、いろんなところで聞いた。

「日本の会社は、重要な会議に、どうして能力がない人を寄越すのか。会議に出席する人に決定権を持たせないのはなぜか。会議の場で、こちらが要望や質問を出しても、すべて『社に持ち帰って検討し、後日、回答します』という答え。全然、議論にならない。これでは会議をする意味がない。だから日本企業との事業はスピード感に乏しくて困る」と言われたこともある。

 ベトナムの会議は、その場で話が決まり、どんどん進む傾向が強いのは確かだ。私がある日、ホーチミン市観光局から「日本人旅行者向けのパンフレットを作りたいから、今から来てくれ」と電話をいただいたときのことだ。

 30分後に駆けつけたら、既に主要メンバーが招集されており、すぐにプレゼン。「どんな内容にすべきか?」「何ページくらいが適当か?」「何部くらい印刷すればいいか?」などの質問に回答しているうちに、その場で発注が決まり、制作費に関する決裁もいただいてしまった。「社に持ち帰って検討します」という回答をしていては、仕事は受注できなかっただろう。

 一方、決断が早い=拙速という面もあるのも事実だ。ベトナムで、特に飲食店の出店を見ていると、私のような素人目にも「もう少し、事前に調査をしてから店を出せばいいのに」と感じることがある。「アイデアを思いついたら、とりあえず、店を出してみる。ダメだったら、閉店すればいいさ」という場当たり的な出店が、少なくないのではないか。

 日本企業は確かに決定に時間はかかるが、例えば一度、受注・発注契約をしたパートナーは大切にする。育てていこうという努力もする。私がこの話をしたところ、何人かの参加者が大きく首を縦に振ってうなずいていた。おそらく日本企業と取引きをした経験のある方々なのだろう。

日本の存在感は、ベトナム庶民の目にも見える形で増えている。それだけに日本企業、日本人に対する期待は大きい。これはホーチミン市中心部で進んでいる地下鉄1号線の工事現場。担当しているのは日本企業だ【撮影/中安昭人】