今オフィスに二つの大きな変化が起きようとしている。一つは、厳しい経済環境のなかでのオフィスにかかわるコストの見直しであり、もう一つが、ITやネットワークの普及による働き方の変化である。この二つの変化を併せて考えていくと、オフィスの効率化を実現するための選択肢が見えてくるはずだ。

 企業を取り巻く環境が厳しさを増し、“聖域なきコスト削減”が進められるなかで、オフィスにかかる経費も当然その対象となっている。じつは不況時は、オフィスのあり方を考えるチャンスでもある。賃料も下降しているので、よりよい条件の物件が探しやすく、現在の賃料の見直し交渉も進めやすい。

 さらに現在は“オフィス”そのもののあり方を考える好機でもある。ITと通信の普及によって仕事の進め方は大きく変化してきた。オフィスには一人1台のPCが用意され、コンピュータシステムやメールを利用して仕事を進めるようになっている。電話やFAXに代わってメールが意思伝達の主役となり、社員同士のコミュニケーションも情報システムを通して行われるケースが増えてきている。しかし、オフィスは相変わらずの島形式のままだ。働き方が変わっているのに、オフィスがそのままでよいはずがない。

 オフィスの目的は、ビジネスの生産性を向上させることにある。業務を効率化し、社員の創造力を引き出し、モチベーションを上げることに貢献できているかどうか。そうした観点から今のオフィスを見直すことは、企業の収益性の強化につながるはずだ。

物理的な場所以外も含めて
ワークスペースを考える

 新しいオフィスのあり方を考えるときに、ポイントとなるのが、ワークスペースのとらえ方だ。ワークスペースは従来、「働く場所」という物理的な場所を指してきた。現在ではこれに加えて、仮想的な空間もワークスペースとしてとらえられるようになってきている。

 経済産業省では「知識創造行動を誘発する空間、ICTツール、ワーカーへの働きかけ等(加速装置)と、組織目標とプロジェクト目標に向けたマネジメント(駆動力)の双方を備え、組織の創造性を最大限に発揮するための働き方に適した場」を“クリエイティブ・オフィス”として、推進運動を進めている。ここでも“オフィス”は、物理的空間以外も含む言葉としてとらえられている。