人が五感を使って外部から得る情報のうち、実に約8割を「視覚」から得ているとされる。目はそれほど大事な器官なのだ。もっとも、多くの人は「急激に視力が落ちた」「視野が欠けた」といった症状でも出ないかぎり、「目の健康」について強く意識することはないだろう。10月10日は「目の愛護デー」。ふだん意識していない人も、あらためて自分や家族の目の健康を考える機会にしたい。

 「目が疲れる」「ゴロゴロする」「かゆい」「目やにが出る」――。

 現代人の目を取り巻く環境は過酷だ。エアコンでからからに乾いたオフィスで、長時間パソコンを凝視する。仕事を離れてもスマホとにらめっこ。通常、人は4秒に1回程度まばたきをしているが、画面を凝視していると15秒に1回程度になっていることもある。乾いた環境で、まばたきが減れば、目の表面が乾燥する「ドライアイ」を起こしやすくなる。

  図1を見てほしい。現代病ともいえるドライアイは、20歳から増えてくる。その名のとおり目が乾く病気だが、年齢とともに乾燥から目を守る涙や油分の分泌にも変化があらわれるようになり、重症になると目に無数の傷がついていることもある。眼科を受診して、きちんと対処しておきたい。

 また、ソフトコンタクトレンズを使っていると目から水分が蒸発しやすくなる。昨今は水分の蒸発が少ないソフトコンタクトレンズも製品化されている。目が乾きがちと感じている人は、目の乾燥しにくいコンタクトレンズに変えてみてもいいだろう。

 さまざまな原因で目の病気は起こるが、何といっても関係が深いのが「加齢」だ。体と同様、年を重ねるにつれ不具合が起こりやすくなる。

 加齢という響きから、60代、70代といった高齢者をイメージしがちだが、早い人だと40代から発症する病気もある(図1)。40歳を迎えたら、多少なりとも意識しておきたい。

 「少し顔から離して細目で新聞やスマホを見る」。「老眼」になった人に特有のしぐさだ。しばしば目はカメラに例えられるが、老眼は加齢に伴ってピント合わせの能力が落ちた状態。若いうちは無意識にできていたピント合わせが、近いところほど難しくなる。個人差はあるものの40代になると症状があらわれる人が多い。

 もっとも、老眼は白髪や肌のシワのようなもので不便ではあるものの、通常はそう深刻ではないと思う人が多いだろう。徐々に進行していき、55~60歳で進行が止まるが、「老眼鏡は恥ずかしい」といって我慢していると、肩こりや頭痛の原因になることもある。老眼鏡と気付かれないレンズの境目がない眼鏡や、遠近両用コンタクトレンズといった選択肢もある。