最高値を更新する株式市場が続出中のアジア新興国。
背景と今後の見通しはいかに?

 アジア諸国の株式市場が絶好調だ。新興国経済に詳しい第一生命経済研究所の西浜徹(にしはま・とおる)さんは「日米欧の金融緩和で、高い利回りを求める資金が景気の好調な新興国に向かったため」と背景を説明する。各国の状況はどうか。

 「インドネシアは内需主導型の経済に加え、中国など新興国の好景気で天然ガスなどの資源輸出も好調なことが景気の押し上げ材料に。タイとマレーシアは、アセアンでも工業化が進んでいる国であり、アセアン経済の底堅い拡大が続けば、その恩恵は受けやすい」(西浜さん)

インドネシア、タイ、シンガポール……などなど <br />高値更新している新興国はまだ買えるのか!?09年1月からトルコとインドネシアの株価は2.5倍に!

 シンガポールは、成長戦略に沿った国家運営に加え、規制が少なく投資しやすいため、「資金がアジアに向かう際はシンガポールに入る」。
「フィリピン経済は消費が牽引役。それを支えるのは、GDPの1割を占める海外労働者の送金。景気は底堅いが、もう一段上がるのは難しい」

 トルコの場合は、ドイツを中心にEUの景気が底堅いことから、「自動車や機械などの輸出が回復し、雇用も伸びて内需を押し上げている」。


この好景気は今後も続くのか。西浜さんはアセアン諸国の景気は底堅い。懸念材料は海外からの資金流入で景気が過熱し、腰折れにつながること。トルコについては、債券問題の再燃により、EU経済が不安定になると資金流出の可能性もあると指摘する。

 「長期的な成長は期待できるが、株価は急上昇したぶん調整圧力はある」とも。投資は、長期スパンでゆっくり!?

★各国の特徴とリスクは以下のとおり!

<シンガポール>
特徴●経済の自由度が高い。投資・高度人材の誘致による経済発展路線。
リスク●国民間の格差拡大による政府への不満の表面化。

<フィリピン>
特徴●GDPの8割が消費であり、それを支えるのは海外労働者からの送金。
リスク●ペソ高による送金の目減り。インフレ。

<日本>
特徴●たばこ増税、エコポイント終了による景気低迷。円高による輸出低迷。
リスク●問題解決が進まず、菅首相の早期退陣。政局の混迷。

<タイ>
特徴●アセアン随一の工業国。自動車産業が盛んで裾野も広く厚みがある。
リスク●アピシット派とタクシン派の政治的対立の悪化。

<トルコ>
特徴●EUの景気回復の恩恵を受け、輸出が回復し、雇用が伸び、内需が拡大。
リスク●来年の大統領選。ギリシャ問題の再燃。

<アメリカ>
特徴●バランスシート調整の早期終結に向け、株高政策を維持する見込み。
リスク●株価は好調だが、指標は振るわず実体経済は不透明。

<インドネシア>
特徴●人口が多く、内需主導型。天然ガスやゴムなどの資源輸出も好調。
リスク●首相の支持率の低下による政局の混迷。

<マレーシア>
特徴●工業国でありイスラム金融センター。TPP加入で大化けの可能性も。
リスク●経済政策で失敗した場合、政局の混迷。

<中国>
特徴●第12次5カ年計画がスタート。景気拡大基調、高成長も続く見込み。
リスク●社会不安が続くが、それほど心配はない。

(文/大山弘子) 

※この記事は2010年11月20日(土)に発売された月刊マネー誌『ダイヤモンドZAi』1月号に掲載しています。