相続・贈与税の負担が大きくなる中、資産をうまく子どもや孫に承継していくには、幾つかポイントがある。多田恭章税理士は、税金面だけでなく、使われ方まで配慮した資産承継が不可欠とアドバイスする。

tada租税調査研究会 主任研究員
多田恭章 税理士

1990年、国税局入局。国税庁国際業務課係長、国税局特別国税調査官主査(移転価格調査)、国税局国際税務専門官、国税庁国際業務課情報交換係主査を歴任。2014年退官後、税理士登録。社会保険労務士。

 2015年1月から、相続・贈与税が増税となり、資産承継においては税金面ばかりクローズアップされるが、租税調査研究会の多田恭章税理士は「節税ありきではなく、子どもや孫の将来を考え、その思いが伝わる資産承継を実行していくべき」と指摘する。

 資産承継を考える際は、年間110万円までなら非課税の「暦年贈与」が基本となるが、「誰にどんな目的で、どれだけの資産を残していくか、相続人らに明確に示しておくことも不可欠」と多田税理士は言う。

 最近では、子どもや孫の「教育」「結婚・出産」「住宅購入」といった使途が明確な資金を贈与する場合の優遇税制(特例)が設けられている。これらは暦年贈与との併用も可能だ。

 特に教育資金贈与は、塾や習い事の月謝、留学費など、適用範囲は広く、目的がはっきりしているため、資産を譲る側としては安心して活用できる。

 ただ、注意したいのが、幾ら贈与するかという判断だ。例えば、教育資金贈与なら、孫に最高1500万円まで非課税で贈与できるが、30歳までに使い切らなければ残ったお金に贈与税が課税される。

 入学金や授業料などその都度の贈与は、金額にかかわらず非課税なので、贈与する側、される側それぞれの時期やタイミングを考慮し、うまく組み合わせて資産を無駄なく生かしたい。