日本人のプレゼンにありがちなのが企画書づくりに100%力を注いでしまうパターン。しかし、企画書づくりはプレゼンの仕事の50%でしかない。成功するかどうかは残りの半分、本番の伝え方にかかっている。ベストセラー『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一さんは、伝え方の技術で「NO」を「YES」に変える可能性を上げられるという。プレゼンにも活用できる伝え方のヒントとは?

伝え方ひとつで
「NO」を「YES」に変えられる

佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/
上智大学非常勤講師

広告代理店でコピーライターをしていたとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書は その体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。 佐々木圭一公式サイト: www.ugokasu.co.jp www.facebook.com/k1countryfree

『伝え方が9割』はシリーズ累計100万部を超えるベストセラーになりました。日本の人口の1%弱の人が読んでくれたことになりますが、まだまだ「伝え方が重要」という認識は浸透していないように思います。

 プレゼンについていうなら、まるまる同じ企画書であっても、プレゼンターの伝え方しだいで相手の判断は大きく変わってきます。

 わかりやすい例がクルマの販売。商品はまったく同じにもかかわらず、Aさんは月に10台売るのに対し、Bさんは月に1台しか売れない。いわゆるセールストーク、伝え方によって売り上げにこれだけ大差が出てしまうのは、ビジネスの世界では珍しくありません。

 僕がこの本を書こうと思ったキッカケがあります。それは、伝える力の威力を自ら実感したからなのです。

 ある日、昼食をサッと済ませようと、近くにあったファーストフード店に入り、フィッシュバーガーセットを頼みました。すると、「できたてをご用意いたします。4分ほどお待ちいただけますか?」と店員さん。それを聞き、僕は待つことにしました。待ちながら「上手だな」と思ったんです。もし、「4分ほどお待ちいただけますか?」という店都合のお願いだけだったら、さっさと店を出ていたでしょう。でも、僕の好きな“できたて”をご用意しますというフレーズを言われたから、行動が変わったわけです。

 食べながら僕は思いました、「これってスゴイことなんじゃないか」と。ストレートにお願いするのではなく、相手の好きな、あるいは心に響きそうな言葉を加えることにより、「NO」を「YES」に変えているのです。僕が払ったのはたかだか500円ですが、彼女がこの伝え方をずっとしていたら、売り上げはもっと上がります。その店全体、チェーン店全体に広がったら、効果はとてつもなく大きくなるでしょう。