低価格な家を主力商品とするパワービルダーの躍進により、「夢の一戸建て」の実現がぐんと身近になった。その一方で、安さゆえの不安や欠陥等が話題になることも少なくない。住んでから後悔しないためには、どんな点をポイントに物件を見極めればいいのだろうか。いざ物件を見に行く前に、起こりがちなトラブルを知っておこう。

割安な建売住宅に
ありがちなリスク

川野武士(かわの・たけし)
日本ホームインスペクターズ協会理事
さくら事務所ホームインスペクター

 2016年の首都圏の新築平均分譲価格を見ると、建売住宅4970万円、マンション5490万円と、前者が500万円以上も安かった(不動産経済研究所調べ)。

 建売住宅の安値傾向をけん引するのは、パワービルダーなど、建築資材を大量もしくは独自のルートで安く仕入れて、低価格化を実現している住宅業者だ。大手ハウスメーカーが自社の分譲地で売る建売住宅に比べると、狭い土地に建てられることが多く、間取りも限定されがちだが、最近ではデザイン性に優れる物件も増えてきている。

 しかし、一見しゃれて暮らしやすく見えても、土地が狭いことから、思わぬ落とし穴も多い。

 「特に都心部の狭い土地に3階建て住宅を建てる場合、それなりに工夫しないと、防水や断熱などの点で、リスクや不具合が多くなります」

 そう指摘するのは、住宅診断の専門家、ホームインスペクターで一級建築士の川野武士氏(さくら事務所)だ。

 例えば、こうした物件では階段が居室の外ではなく、リビング内に設けられていることが少なくない。吹き抜けになっているため、開放感があり、広々とした印象を受けるが、冬は温かい空気が上に逃げてしまい、夏はその逆で、空調が効きにくい欠点がある。床暖房や各室冷房がないと、快適に暮らすのは難しく、光熱費もかさむ。階段位置によっては、小さな子どもの転落を招く可能性もある。

 さらに階段があるとその分、実際に利用できる生活スペースは減る。マンションと同じ延床面積の場合、10~15平方メートルほど狭い印象になることにも注意したい。

 また、3階建て住宅の中には玄関から数歩下りる形で、1階が半地下になっているものがある。これには第1種低層住居専用地域などには高さ制限(10m以下)があるため、下に延ばすことで3階建てを実現している事情がある。

 その結果、半地下部分に適切な防水処理や排水装置を施していないと、水が浸入してきたり、大雨の時に流れ込んだ雨水が排水されずに、部屋や駐車場が浸水する恐れが出てくる。

 このようなトラブルや不具合に見舞われる可能性があるため、値段だけで物件を選ぶのは危険だ。