前田 鎌利(まえだ・かまり) 株式会社 固 代表取締役。一般社団法人 継未 代表理事。1973年、福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、17年にわたり移動体通信事業に従事。2010年に孫正義社長(現会長)の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、初年度年間総合第1位を獲得。2013年12月にソフトバンクを退社、独立。ソフトバンク、ヤフー、ソニー、Jリーグなど200社以上の企業で講演・プレゼンテーション講師を歴任するほか、全国でプレゼンテーション・スクールを展開している。著書『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』(以上、ダイヤモンド社)はシリーズ累計12万部を超えるベストセラーに。この都度「スポットライト」アンバサダーに就任。ハード面からもプレゼン・クオリティをサポート

社外プレゼンには相手の感情を動かす
ストーリーがないとダメ

今回は『社外プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)の中からおすすめのテクニックの一部を紹介する

 前回、このコーナーで紹介した社内プレゼンの資料づくりのポイントは、相手が社内の人なので「シンプル&ロジカルであること」だった。だが、社外プレゼンの場合はこれプラス、「相手の感情に訴えること」が必要だと、前田さんはいう。

「プレゼンの相手は、利害を共有する社内の決裁者とは異なり、こちらのプレゼンを聞く義務はありません。興味を持ってもらわなければ、その時点でアウト。だから、『そうそう、そうなんだよ!』『なるほど!』など感情を刺激する工夫が必要です。ロジックだけでは、社外の人を納得させることはできません。大事なのは、相手の『感情の動き』を意識しながらプレゼン全体のストーリーを組み立てることです」

ストーリーというと難しく思えるが、次の流れを覚えておけばいいそうだ。
(1)共感:「そうそう、それで悩んでいるんだ」と思わせる
(2)信頼:「この人の話は聞く価値がありそうだ」と興味を持たせる
(3)納得:「この人の言うとおりにすれば、たしかに問題は解決しそうだ」と感じさせる
(4)決断:「よし、やってみよう」「商談に入ろう」などと決めさせる

相手がこの4つの感情をたどることをイメージしながら、必要な要素を並べていく。

 こうしたストーリーの組み立てや感情に訴えかけるスライドの工夫によって、誰にでも心を動かす資料が作成できるようになるという。前田さんが「社外プレゼンの資料作成術」を確立したのはソフトバンク時代。孫正義社長が社外に向けてプレゼンするときの資料づくりも担当した。

「企業トップのプレゼンですから、重みがハンパありません。孫社長から直々に厳しいご指摘をいただきながら、何度も何度も資料をつくり直したものです。これが非常に勉強になりましたね。ご存知のとおり、孫社長は大変情熱的な人。どうすれば、自分の熱い思いを聴衆の心に届けることができるか。それを徹底的に考え抜く孫社長の姿勢から、多くのことを学ばせてもらいました」

「相手の感情を動かす」――これが前田さんの社外プレゼンの鉄則だ。開始30秒で聞き手の共感を獲得し、3~5分で納得・決断へと導く資料づくりのポイントを見ていく。