東日本大震災の発生によって、内陸部の断層における直下型地震の発生確率が高まったとされる。首都圏で直下型地震が発生すれば、人口集中による複合災害が発生し、大きな被害がもたらされるのは確実。あらゆる自然災害の被害はその場所の地理的要因、環境が大きく影響する。その地域ごとに独自の対策がなされない限り、有効な対策とはなりえない。

和田隆昌(災害危機管理アドバイザー/NPO法人 防犯ネットワーク理事)

和田隆昌わだ たかまさ/アウトドア系雑誌の編集者を歴任。「防災士」資格取得から災害危機管理アドバイザーとしての活動を開始。情報サイトAllAbout「防災」ガイド担当。主な著書に『地震・津波の新常識』(ブティック社)『大地震から家族を救う方法』(白夜書房)、iPhone、iPad用電子書籍『地震が起きる前に読む本』(サンマーク出版)がある。ほかにも、防災記事構成・執筆、講演会、メディア出演など幅広く活躍中。

 2011年の春。これまでの防災マニュアルが根底から覆されるような地震災害が日本列島を襲った。その被害規模の巨大さに「想定外」「未曾有の災害」などという文言がマスメディアに溢れていた。しかし本当にすべてが想定外だったのだろうか。

「想定外」を
「想定」することは、はたして可能なのか

 世界で発生する地震の20%が周辺地域で発生している世界最大の地震リスクを抱える日本列島。その災害対策は歴史のなかで、当然のごとく大きな学びを得て、さまざまに進化してきたはずだった。自然の力は強大で、常に想定を超える事象が発生するという。確かに阪神・淡路大震災においては誰もが発生の予測をしていなかった。しかし、あの震災を経て16年。国内外で多くの巨大な自然災害が発生し、人は多くを学んできている。

 地震予測の研究は進み、海溝型の三陸沖では30年内に99%の発生予測がなされていた。そのため、それぞれの自治体ではできうる「予算のなかで」ある地域では10数メートルの防波堤を造り、またある港では3階建て以上の防災施設を造り、それぞれ「万全」な対策を行っていたはずであった。

 しかし今回の東日本大震災の結果を見る限り、すべてが機能するには至らなかった。「被害想定」はことごとく破られる結果となった。

 防波堤などのハードの防災には限界があることはすでに明確になっている。すべての海岸に20メートルの防波堤を造ることは非現実的な話で、海岸近くに住むということは、常に津波のリスクを背負って生活をせざるをえないということなのだ。
沿岸地域においては、津波の記憶を薄れさせることなく、リスクを最小限にする避難体制、高地移転などのソフト面での対応が必要であろう。そしてそれは国や自治体だけに頼ることなく、住民自らが考え、実行し続けるほかはない。「被害想定」は考えうる「最大限」に引き上げ、次の災害に備えるべきである。

迫る危機、首都直下型地震にどう備えるか

 日本の都市部、特に東京・横浜の災害危険度指数は、すでに2003年の時点で、欧州の再保険会社による分析で世界の主要都市(ニューヨーク、ロンドン、パリ)の数十倍になると試算されている(図表1参照)。

ミュンヘン再保険資料図表1 リスク・インデックス(一部抜粋)
出典:ミュンヘン再保険ホームページより