アジア諸国をはじめ、欧米やオーストラリアでは早くから「MICE」の振興に積極的に取り組んでいる。日本でも2007年に観光立国推進基本法に基づいて政策目標を掲げ、アジアにおける最大の国際会議開催国を目指している。多くの集客交流が見込まれ、訪問客の消費性向が高く、経済効果や地域の活性化など多大なメリットを持つといわれる「MICE」。平成21年度の「MICE実態調査」では、日本の市場規模は約9200億円と推計された。
そもそも「MICE」とはどういうものなのか、「MICE」の現状や課題を、観光ジャーナリストの千葉千枝子氏に聞いた。

 MICE(マイス)とは、ミーティング(企業等の会議)、インセンティブ(報奨・研修旅行)、コンベンション(国際会議等)、イベント・エキシビション(展示会・見本市等)の頭文字を取った造語で、多くの集客交流が見込まれる大規模なビジネスイベント等の総称である。

広範な分野に
経済波及効果をもたらすMICE

千葉千枝子氏
観光ジャーナリスト、東京成徳短大・城西国際大講師。1988年中央大学経済学部を卒業後、富士銀行、シティバンク を経て90年に日本交通公社に入社。国内外の旅行営業、企画および添乗業務に従事する。96年に(有)千葉千枝子事務所を設立、代表取締役に就任。観光・運輸全般の評論、海外暮らしについての執筆や講演活動を行っている。

「一般の観光と違い、MICEはグローバル企業や学術系の団体の関係者やその家族が世界各地から訪れるため、大型団体となるケースが多いのが特徴。また滞在日数も多く、開催後にはパーティや周辺観光が発生するため、コンベンション施設や展示ホール、ホテルなどの宿泊関連施設、周辺の観光施設や運輸機関、さらにはイベント関連業者など、広範な分野に多大な経済波及効果をもたらします」と千葉千枝子氏は説明する。

 観光庁の調査(2009年度)によれば、MICE全体の訪日外客数は年間約100万人、市場規模は9200億円、そのうち訪日外国人の消費額は約1200億円と推計され、全訪日外国人の消費額約1兆600億円の約9分の1に当たる。組織による経費の負担比率が大きいので、1人当たりの投下金額が多いのがMICEの特徴なのだ。

 MICEにはさらに開催周辺地域が活性化、国際化するというメリットがある。プロモーション効果が高いため、MICEの誘致が町おこしの起爆剤になるケースが多い。

「好例となったのが、08年に開催された“北海道洞爺湖サミット”。会場に選ばれたザ・ウィンザーホテル洞爺は、バブル期の箱物投資の象徴でしたが、開催が決定したあとはホテルのイメージや認知度が高まり、ツアーの催行が相次ぎました。また地元の北海道もこのサミットを観光PRのチャンスととらえて、観光振興アクションプランを策定。花々で街を彩るなど、道民挙げて“おもてなし”の取り組みを行いました。サミットの様子は全世界に配信され、その後の国際観光振興にも大きな効果を生んだのです」(千葉氏)。