東日本大震災から1年。それ以前は「夢の未来技術」という印象が強かったスマートハウスが、急速に現実の住宅選択肢として広がりつつある。なぜ今、スマートなのか。暮らしはどう変わるのか。官民合同で取り組みを進めるスマートハウス標準化検討会(経産省)座長の、早稲田大学・林泰弘教授に聞いた。

 

生活防衛としての
電力ピークカット&シフト

林 泰弘(はやし・やすひろ)
1967年、福井県生まれ。早稲田大学理工学部電気工学科卒。同大学院理工学研究科博士課程修了。茨城大学、福井大学を経て、2009年より早稲田大学先進理工学部教授。先進グリッド技術研究所所長(兼任)。11年より経済産業省スマートハウス標準化検討会およびスマートメーターインターフェースタスクフォース座長。

 日本人がひんぱんに「スマート」という言葉を耳にし始めたのは、オバマ米大統領がグリーン・ニューディール政策を打ち出し、その主軸にスマートグリッド(次世代送電網)を据えた2009年以来だから、かれこれ3年たつ。

 米国でも当然、電力網だけでなく家単位のスマートハウスへの取り組みが進んでいるが、それ以上に今、世界の注目を集めているのが「日本のスマートハウスの動向」だという。

「原発事故の影響を受けたエネルギー需給のひっ迫から、電気料金値上げは避けられない見通し。おまけに日本人は几帳面で、家庭ごとのエネルギー・コントロールに向く国民性を持ちます。従来は家庭内のエネルギー使用をチェックし、コントロールする術がなかったが、スマートハウスが普及すればそれが現実的になるはず」(林泰弘教授)

 たとえば、エアコンや洗濯機、食器洗い機など、家中の家電をフル稼働させる時間帯をピーク時とする。この上限値を引き下げると、効果的なエネルギー・コントロールが可能だ。

 突出して電気を使っている時間帯がわかれば、そこを避けることにより、消費電力の上限を抑えることができる(ピークカット)。電気の使い方で上限が出る時間帯をずらすこともできる(ピークシフト)。相乗効果で安定して電力使用を下げられれば、契約電力を落とせて、さらに電気代を安くできる。

「省エネ家電に買い替えよう、こまめに節電をしようという個々の努力とは別に、ビルなどで行われているトータルなエネルギー・コントロールの視点が家庭にも入り始めています。新しい意識が芽生えてきているといっていいでしょう」(林教授)

出所:早稲田大学大学院先進理工学研究科 林泰弘研究室