三菱自動車のSUV、『アウトランダーPHEV』がヨーロッパで売れている。環境意識が高く、また自動車の完成度をシビアに評価する欧州で支持される理由は何か。同社開発陣に『カー・アンド・ドライバー』誌の竹内龍男編集長が聞く。

カー・アンド・ドライバー編集長・竹内龍男氏

『カー・アンド・ドライバー』編集長・竹内龍男氏(以下、竹内) アウトランダーPHEVの、欧州での販売好調の要因をどのようにとらえていますか?

商品戦略本部CPS・大谷洋二氏(以下、大谷) おかげさまで高い評価をいだたき、2013年10月の販売開始以来、昨年12月時点での累計販売台数が10万台を超えました(欧州34か国総合)。当初は充電設備のインフラが整っている国に限られていましたが、その後2015年12月に5万台を超え、以降、3年連続で欧州のプラグインハイブリッドEVの販売実績ではトップです。競合車も増えていますが、イギリス、ノルウェー、スペインでは2017年のカテゴリー販売台数で1位となっています。

竹内 環境意識の高い欧州で支持される理由を、どうとらえているのでしょうか。

三菱自動車商品戦略本部CPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)・大谷洋二氏

大谷 CO2などの排出物削減のため、欧州ではディーゼルが進化しましたが、最近は電動化にシフトしてきています。

竹内 確かに、ガソリンを使わず、電気だけでも実用的な距離の走行が可能ですね。

大谷  電動で約60km(JC08モード)の走行が可能です。北欧では、通勤や買い物、子供の送り迎えといった日常の車での行動範囲が片道20km程度あります。アウトランダーPHEVはプラグインハイブリッド車ですが、純粋なEV(電気自動車)に匹敵するバッテリーを搭載し、日常の生活範囲において、ガソリンを使わずに電気だけで走れる車にしました。まずは、そこが支持を頂いている大きな理由と考えています。

竹内 単に環境性能の高さだけでは、3年もトップを維持するのは困難と思いますが、どのような人たちに選ばれているのですか?

大谷 ビジネスエグゼクティブがプレミアムセダンから乗り換えているケースをよく聞きます。欧州の高級セダンのプラグインと比較されるそうですが、そういったプレミアムブランドにも負けない、自動車としての完成度の高さには自信を持っています。また、三菱自動車の得意とするSUVとしたことで、室内の広さと使い勝手の良さが好評をいただいています。一般的にSUVは燃費がよくないイメージがありましたが、得意とする電動技術によってそれを覆し、環境性能の高さとSUVの使い勝手の良さを両立しました。欧州は、自動車が文化として成熟し、暮らしとも密接に関わっているため、ユーザーの目も肥えている。環境性能の高さと同時に、使い勝手の良さ、また運転する楽しさにも妥協しないクルマづくりが、市場で評価されていることに繋がっていると考えています。