なぜ日本人は勉強量の割に英語を使いこなせないのか。来日した、英文法の世界的ベストセラーの著者であるレイモンド・マーフィー氏に、外国語習得の秘訣を聞いた。

『マーフィーのケンブリッジ英文法』の著者
レイモンド・マーフィー氏

 私は学者でありませんから個人的な意見なのですが、新しい言語を学ぶには、できるだけ多くのデータに触れること、特に聞くことが重要だと思います。耳で聞いたデータを頭の中にインプットして積み上げる。聞くことによってネイティブスピーカーがどう発音しているのかを知ることができます。次に実際に使ってみること。単に頭で分かっていることと、実際に使えることとは別の問題です。私は日本語では動詞が後ろに来ることは知っていますが、誰かと話すときに文章としてそれを使えるかは別の話なのです」

 今はインターネットの発達で、英語を聞くチャンスは増えている。聞くことは話すことよりも重要だと考えるマーフィー氏は、そうしたツールを大いに活用すべきだという。また日本国内でネイティブスピーカーと話す機会は少ないが、日本人同士で英語を使うのも有効だという。間違えてもいい環境で、スポーツを習得するように繰り返し練習する。「言語習得とは、勉強ではなくもっと実用的なことなのです」とマーフィー氏は言う。

 英語の教師として、いろいろな言語を持つ生徒たちに教えてきたマーフィー氏。国や言語によって英語を学ぶとき、つまずくポイントは違うのだろうか。

 「欧州では言語の属性が似ているので、発音は異質であっても、文法の小さなミスだけで、意味に大きな影響を与えません。ところがアジアでは、言語や文化の成り立ちが違うので、例えば日本人が英語の文章を書くと、本当に理解不能な文章を書いてしまうのです。恐らく経験を通じて言葉を自然に学んだというより、辞書に頼り過ぎたり、日本語の経験に基づいて英語の構文を作ったりしてしまうからでしょう。その意味でも、やはり聞くことを通じて、英語のデータを自分の中で十分に蓄積することが大切だと思います」

世界で、シリーズ累計約3500万冊を数える『マーフィーのケンブリッジ英文法』(ケンブリッジ大学出版)。中高生向けの教材が数多く出ている

  『マーフィーのケンブリッジ英文法』シリーズは、世界で3500万部を超えるベストセラーになっている。その理由は、生徒が常にミスをするポイントを反映し、必要のないものをそぎ落としたシンプルさにある。もともと自習用のワークシートとして配っていたものを素材としているため、教室の外で勉強しやすい内容になっているという理由もある。

 「言語を学ぶには、長期間それに取り組むことが必要になります。できれば2年間くらいその場所に滞在することが理想ですが、それがかなわない場合は、やはりできるだけ耳で聞く機会を増やすこと。今後AI(人工知能)の発達で通訳が自動化するともいわれていますが、違う言語を学ぶことは、違う文化を学ぶことであり、その国の人々を深く知ることにつながります。どんなにAIが発達しても、言語を習得して会話をすることは大切だと考えています」

学芸大学附属高校で
「Raymond Murphy氏来日記念
学校訪問インタビュー」

今年2月に来日したレイモンド・マーフィー氏。日本滞在中の2月2日、東京学芸大学附属高等学校(東京都世田谷区)で、生徒向けの講演を行った。講演は同校の講堂で行われ、約300人の高校1年生が耳を傾けた。質問コーナーでは生徒たちが流ちょうな英語でマーフィー氏に勉強法などについて質問をした。

 

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