「人手不足をどう乗り越えるか」を起点に
物流の未来は描かれていく

「物流」の未来~日本の物流はいかなる変化を遂げるか

課題が山積する物流業界。だが、今、さまざまなカテゴリーのプレーヤーが、「あるべき姿」を見いだすべく動きだし「物流」を変えようとしている。未来の物流業界はどんな姿になっていくのか。日本を代表する老舗物流業界紙「カーゴニュース」の西村旦編集長に聞いた。

西村 旦(にしむら・たん)/「カーゴニュース」編集長。1992年株式会社カーゴ・ジャパン入社。「カーゴニュース」編集部記者として、物流事業者、荷主企業、関係官庁などを幅広く担当。2011年代表取締役社長兼編集局長に就任。同年、幅広い交通分野での物流振興を目的として創設、優良な論文などを顕彰する「住田物流奨励賞」(第4回)を受賞

物流業界に起きている「パラダイムシフト」

──宅配のドライバー不足を引き金に「物流危機」が注目され、物流業界が長年抱えていた課題が露呈しました。

西村 おっしゃる通り「物流危機」と一般的に騒がれ始めたのはここ最近のことですが、物流業界の構造的な問題は長く、そして根深く、存在していました。

 物流はどこまで行っても労働集約型の産業であり、最大のリソースはいつの時代も「ヒト」です。少子高齢化によってその供給に限界が生じてきたことが、「物流危機」の最大の原因です。かつての〝ヒト余り〟時代には物流力を湯水のように使うことができましたが、そうした時代は完全に終わりました。

 荷主である企業も、物流企業も、限られたリソースの中で物流を滞りなく完結させるためのパラダイムシフトが求められています。つまり「人手不足をどう乗り越えるか」を起点に、物流業界の新たな在り方・姿を構築しなければならない。それでしか「物流危機」といわれる状況を変えることはできません。

──物流業界は今どのように変わろうとしているのでしょうか。

西村 AIやIoT、ロボティクスといった新技術の開発を通じて「省力化」「自動化」による生産性向上を図ることが物流の進化の方向性となっています。

 また、限られたリソースを有効活用するためには、協働・協創による「シェアリング」という考え方がとても重要になります。さらに、シェアリングを実現するためには、各プレーヤーが相乗りできる「プラットフォーム」を構築する必要があります。

 例えば、トラックの平均積載率は40%程度にすぎず、荷物を運んだ帰りは空のまま走っていることも少なくありません。その部分を共同物流の推進やAIを駆使したマッチングなどのプラットフォームを使って往復実車率を高めていければ、リソースの有効活用につながる、といった具合です。

 ただ、物流はリアルな世界であり、どんなに技術革新が進んでも、「ヒト」というファクターは不可欠です。

──人手がかかるところはできるだけ労働条件を改善したり負担軽減策を講じる、ということが重要ですね。

西村 そうです。そのため、ドライバーや倉庫作業員を確保するための働き方改革は必須であり、その原資となる運賃・料金アップも必要です。また、今後の物流現場には女性の担い手も増えるでしょう。そのため、作業の効率化や省力化を促すツールの注目度はますます高まっていくことが考えられます。

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