2000年代以降、日本にも建設プロジェクト・マネジメント(PM)を導入する事例が増えてきた。その先駆者ともいえるのが、レンドリース・ジャパンだ。発注側と受注側の間に入り、発注者のニーズを把握した上でコストと品質のバランスを見極める。また、進捗管理や安全管理などでも大きな役割を果たしている。同社の取り組みについて、フリーアナウンサーの木佐彩子氏が聞いた。

日本でいち早く
PM事業を展開

木佐彩子氏 フリーアナウンサー
1971年生まれ。米ロサンゼルスで幼少期を過ごし、青山学院大学英文科卒業後、 フジテレビ入社。出産を機にフジテレビを退社し、 夫の石井一久氏(現埼玉西武ライオンズ投手)のMLB移籍に伴い再度渡米。 帰国後本格的にフリーアナウンサーとして復帰。 現在、BS朝日「いま世界は」(毎週日曜19時~21時生放送)などに出演中。

木佐 レンドリース・ジャパンは、日本で事業を始めて20年以上になるそうですね。

ガウチ 日本での営業スタートは1988年です。当初は建設会社として参入したのですが、その後、建設に関するコンサルティングを行う建設プロジェクト・マネジメント(PM)にシフトしました。2000年代に入ってから日本でもPMが定着しつつありますが、当社はそのパイオニア的な存在。日本での実績も増えています。東京の汐留シティセンター、沖縄科学技術大学院大学の建設にもPMで参画しています(次ページ写真)。

木佐 レンドリース・グループとしての事業の全体像はどのようなものですか。

ガウチ 本社はオーストラリアにあり、世界の30ヵ国以上で事業を展開しています。日本ではPM事業がメインですが、海外では建設に関するフルサービスを提供しています。不動産ファンドの組成から開発、建築物の設計・施工、さらにはオペレーションまで。最近の例としては、ロンドン五輪の選手村があります。投資と開発だけでなく、五輪終了後に分譲マンションとして販売されることを視野に入れ、改築コストのかからないようノウハウを生かしながらデザインも手がけています。

第三者の専門家だから
指摘できること

木佐 PMが入ることによって、顧客にどのようなメリットがあるのかを教えてください。

アンドリュー・ガウチ氏
レンドリース・ジャパン 代表取締役社長兼CEO

オーストラリア・ロイヤルメルボルン工科大学卒。 同国の建築会社シビル&シビック(現レンドリース)を経て、 熊谷組で香港の橋梁建設プロジェクトに従事。 2006年にボヴィス・レンドリース・ジャパン (現レンドリース・ジャパン)執行役員となり、07年12月より現職。

ガウチ 発注側と受注側だけでプロジェクトを進めることには、いくつかの課題があります。通常、発注者にとってプロジェクトの詳細を把握するのは難しく、ブラックボックスになりがちです。その中身を把握して正しく評価するには、各種建材の相場を含めた情報収集、それぞれの設備が本当に必要かどうかを判断する専門性などが必要です。例えば、建築家によってはしばしば必要以上のものを設計に盛り込もうとします。PMが入っていない場合、工事費が上がれば建設会社も売り上げが増えるので、誰もチェックしない状態になりかねません。第三者としてのPM事業者が両者の間に入ることでプロジェクトの透明性を担保し、オーバースペックを回避しながら品質とコストの最適解に近づくことができます。

木佐 コストダウンしながら、いい建物ができる。施主にとってはありがたいですね。

ガウチ プロジェクトにもよりますが、当社の実績では2~3割のコスト削減を実現した事例が多数あります。ただ、コスト以外のメリットも重要です。当社は高級ブランドの店舗建設にも参画していますが、こうしたケースでは品質がより重視される傾向があります。私たちはグローバルネットワークを生かして、顧客のニーズに合致した提案ができます。安全管理やスケジュール管理の面でもPMを導入するメリットは大きい。先ほど不要なものを造らないという話をしましたが、それはスケジュールの短縮につながります。