技術の進歩により初期のがんの発見率が高まり、治癒率もアップしている中、がん経験者は増える傾向にある。だが一度がんになってしまうと、保険に加入することは難しい。アメリカンホームは、この現状を打破すべく、がん経験者でも入りやすいがん保険を発売し、注目を集めている。なぜこの商品を開発したのか。開発担当者の杉本新司氏に聞いた。

A&Hビジネス部
アンダーライティング・
ポートフォリオ室室長
杉本新司

 かつては、がん=死に至る病気と考えられがちであった。

「最近では、さまざまな治療方法が確立されたことで、がんも治療すれば治る病気だという考え方が広がりつつあります。また、人間ドックなど検診の技術が進歩したことによって、早期発見、早期治療も可能になっています」

 杉本新司氏は、こう話す。

 実際に、検診技術や医療技術の進歩によって、世の中のがんに対する意識は大きく変化しつつある。とはいえ、がんの治療は、病状にもよるが、治療費が高額になるケースもある。必ずしも「不治の病」ではなくなったからこそ、その後も長く続く人生の中でいざ再発したときのために備えたいという意識も高まっているのだ。

申込者の3割が保険加入できない

 がん保険に限らず医療保険は、病気やけがの治療にかかる経済的負担を軽減するものだ。

「保険会社は、がんを防ぐことに直接関わることはできません。ですが、がん保険を提供することで、病気と向き合うために必要な治療費の負担を軽減するお手伝いはできます。アメリカンホームでは、がん保険によってがんと闘うためのサポートをしたいと考えています」 

 これまで同社は、がんの治療に特化した「みんなのほすピタる ガンタイプ」というがん保険を提供してきた。他にも「みんなのほすピタる 総合医療タイプ ガンプラン」のようながんの手厚い補償に加え、がん以外の病気にも備えられる総合的な医療保険もある。しかし、どちらも過去に大きな病気をした経験や、現在治療中の持病がない、健康な人を対象とした保険だ。

「過去にがんを経験していたり、現在治療中の持病があるために、申し込みいただいても3割ほどの方は保険に加入することができない状況でした」

がん経験者でも加入できる保険を作りたい

 ひと口にがんといっても、治療が終わると以前と変わらない生活を送れるケースも現在では少なくない。

「むしろ、がんにかかったことで健康管理に気を付けるようになり、大きな病気をしていない人より元気な方もいます」

 にもかかわらず、がんになったことがあるためがん保険に加入できず、再発した場合の備えがないままに、不安を抱えている人は多い。杉本氏は「他の持病があっても入れる保険があるのなら、がんの経験があっても入れるがん保険があってもいいのではないか」と考えたという。2009年のことだ。

「まず、がんの治療後、すぐに入ることができるがん保険があるかどうか、ウェブサイトをチェックしたり、資料請求をしたりして調べました。しかし、どこの保険会社にもそのような商品は見当たりませんでした」

 なければ作ろうと考えたものの、保険金の支払いばかりが多くては、採算が取れない。「高額な保険料設定にすれば、採算は取れるでしょう。ですが、それではお客さまのニーズに応えることはできません」

 双方にメリットのある商品を開発するには、信頼性の高いデータを集めることが不可欠になる。杉本氏も「マーケティングには非常に苦労した」と話す。