家を建てる、あるいは購入する前は、「こんな住まいにしたい」という夢が大きく膨らむ。それをうまく現実に着地させるには、何に気を付ければよいのだろうか。「家族が喜ぶ家」を実現させるため、見落としがちだが実は重要なポイントを住宅評論家の坂根康裕氏に聞いた。

片付けやすい家は
「きれい」を維持しやすい

坂根康裕(さかね・やすひろ)
大阪府出身。1987年リクルート入社、「都心に住む」「住宅情報スタイル首都圏版」編集長を経て、住宅評論家に。日本不動産ジャーナリスト会議会員。ウェブマガジン「家の時間」主宰。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)がある。

「家族が喜ぶ家」のイメージとして、よく挙げられるのが「リビングでだんらん」「かわいい子ども部屋」「お父さんの書斎」「お母さんの家事室」など。しかし、そのような間取りの積み上げで物事を進めていくと、重要なことをつい見落としがちに。

「家にかける予算は人それぞれですが、共通して重要なポイントがあります。それはちゃんと片付いた清潔な空間を維持しやすいこと。豪華な天然大理石を敷き詰めた玄関であっても、靴だらけ、泥だらけでは気持ちよく住めませんよね」と語るのは、住宅評論家の坂根康裕氏。

 そのためにはまず収納を「暮らし方」に合わせて確保する必要がある。玄関であれば靴や傘の数だけでなく、趣味のグッズまで収まることを考えたい。

「特に最近の家は、気密性や断熱性が高まって大空間をつくりやすい条件が整い、LDKを広くする傾向が強まっています。キッチンにしても、上のつり戸棚を取り払って空間が抜けた感じにする。その結果、キッチン収納が意外に少なくなってしまうケースが多いようです」

 収納が足りない家は、当然、部屋中にモノがあふれてしまう。片付けやすさ、掃除のしやすさの2点は、最初の計画時にしっかり押さえたいポイントだ。

人生を形づくる
リビング学習の10年間

「基本的に、清潔で気持ちのいい空間を維持でき、一緒にご飯を食べられる環境が整えば、家族は楽しく暮らしていける」と坂根氏。ただし、「子育て」と「介護」については、「最初によく考慮しておくべき」だという。

 まず子育てについては、学習環境をどう整えるかが重要だ。

「最近はリビング学習を中心にする家庭が増えています。小さいうちは親がそばにいたほうが、集中力が持続する。わからなければすぐに聞けますし、頑張っている姿を見てもらえることが励みにもなります」

 母親が料理をする傍ら学習を見るために、カウンターキッチンを選択する家庭も少なくない。一方で、学齢が上がるに従い、リビングより自室で学習したがる傾向が強まる(図参照)。部屋の使い方は、成長に応じて変わっていくわけだ。

「子どもがリビング学習をする期間は、小学校入学から中学生くらいまでの約10年間。短いけれど、人生を形づくる上で非常に重要な時期になります。成長に伴い個室にこもりがちになることも想定し、玄関から直接個室ではなく、リビングを通って必ず家族と顔を合わせる造りにしておいたほうが、思春期のコミュニケーション上、望ましいかもしれません」