メイド・イン・ジャパンだけでなく、海外にも優れた省エネ機器がある。豊田通商は、「シーリングファン」という一見、ローテクに思える機器に着目。米国のベンチャーから起こったそのファンは、まさに革命的な性能を備えていた。

 豊田通商は、経営ビジョン“GLOBAL 2020 VISION”を掲げており、「モビリティ」「ライフ&コミュニティ」「アース&リソース」の3分野で、社会的課題の解決に役立つ価値を創造・提供し、地球社会の持続可能性に貢献することを目指している。

HVLSファン「パワーフォイルエックス2.0プラス」

 その実現に向けて、同社の強みを生かし、風力や太陽光発電、コージェネ(熱電併給)、スマートグリッドや工場廃熱の農業への活用など、国内外で、さまざまな環境事業を展開している。

海外の最新環境機器を日本に紹介、導入

グローバル部品・ロジスティクス本部 営業開発部 新事業グループ 主事 加藤慶之

 トヨタグループ唯一の総合商社である同社は、海外で実用・商用化されている数々の環境機器を国内に紹介してきた。そんな同社が、地球規模の課題解決に向け、注目するのが米国発の大型シーリングファンだ。

 11年の東日本大震災以降、家庭でもオフィスでも「エアコン(空調)+扇風機」という冷暖房スタイルが定着した感がある。しかし、再普及する扇風機の陰で、シーリングファンは、機能、認知度ともに、日本人にとっては、あまり馴染みがないものであった。

 同社が国内に導入販売しているシーリングファンは、1999年に米国で設立されたビッグアスソリューション社製の「ビッグアスファン」。専門的には「HVLS(大風量低速度)ファン」と言い、主に工場や体育館など、天井高のある大空間用に開発された超大型ファンだ。

「従来のファンは、産業用、家庭用を問わず、一般には『小型の羽根を高速で回転させる』ものでした。一方、当社が販売する『ビッグアスファン』は、『直径2.4~7.9メートルの大きな羽根を少ない電力で低速回転させる』という新しい製品です」

 航空機翼の形状に似たアルミ製の羽根でより多くの空気を捉え、空間全体の対流をつくるため、風量が多く、より広範囲を少ない台数でカバーできる。また、機能だけでなく、デザイン性でも優れており、見て、感じることのできる省エネ機器である。

快適かつ経済的で節電にも資する

 ビッグアスファンは静音性でも出色だ。さらに高効率モーターとインバーターを用いて季節やニーズに応じて回転を調整することで省電力に貢献するだけでなく、モーターやベアリングといった駆動部への負荷が少ない。そのためメンテナンスの頻度を大きく低減できる。

 また大規模な工事を必要とせず、条件を満たせば後付けも可能で、短期に低コストで省エネが実現できる。

 ユーザー(人)に対する影響も見逃せない。従来のファンでは、人肌に直接当たる風が強すぎて不快だったり、狭い範囲しかカバーできないため1人1台必要となったりすることで、逆に消費電力が増えがちだった。

天井の高さが30メートル程度あっても、全体の空気を動かすことで心地よい風を体感できる。最大で2700平方メートルを1台でカバーでき、冷暖房時の省エネだけでなく、熱中症、結露対策などでも効果が期待できる。

 ビッグアスファンでは柔らかな風と対流を広範囲に生み出すため、大人数がいる空間でも、夏は、汗を乾かすことで「体感温度」を最大5.5度引き下げ、快適性が大幅に向上する。冷房と併用すれば、冷房の設定温度を2~3度上げることができ、空調エネルギーを10~15%ほど節約できるという。

 また冬には、風による寒さを感じさせずに、上部に滞留する暖気を下すことで最大30%の省エネ効果があり、オールシーズンで快適性と省エネに寄与する。

「ビッグアスファンが普及してきた背景には、環境貢献や省電力による経営への貢献だけでなく、人に対して自然で優しいというプラスアルファもあります。実際、米国では工場等の労働環境が改善されたことから、従業員のやる気が高まったり、労使問題が解決しやすくなったという報告を受けています」