組織を活性化させ、従業員のモチベーションを高めるには、評価、報酬、育成といった基本の制度だけでなく、福利厚生制度の戦略的な運用が欠かせない。予算削減傾向にある福利厚生の役割はどうあるべきか。

 福利厚生には、年金や社会保険といった「法定福利厚生」と、企業が任意に負担する「法定外福利厚生」があるが、近年、法定福利費は増加の一途をたどり、一方の法定外福利費は減少傾向にある。しかし、景気が回復に向かう中で、優秀な人材の確保、人材流出の防止、モラール(士気)の向上といった経営課題を解決する手段として、福利厚生制度の重要性はますます高まっている。

 ただ、景気回復傾向にあるといっても、福利厚生予算を大幅に増やそうという企業はないだろう。そこで現在求められているのは、コストを抑えつつ、従業員のモチベーションアップや生産性向上にもつながる、投資効果の高い福利厚生制度だ。

見直されつつある
永年勤続表彰

 そんな制度の一つとして注目されているのが「表彰制度」。表彰制度にもいろいろなタイプがあるが、公平感が高く、幅広く組織全体のモラール向上に効果がある「永年勤続表彰制度」が見直されつつある。

 終身雇用の崩壊に伴って、永年勤続表彰は、その意義が問われることも多かった。ところが産労総合研究所の調査によれば、近年、特に中堅・中小企業において、永年勤続表彰は増加傾向にあるのだ。全体での実施率は約8割にも達する。会社への帰属意識や一体感のある企業風土の醸成、社員間コミュニケーションの向上などを重視したい企業の思惑と、永年勤続表彰の効果がマッチしているからだと推測できる。

 表彰方法は、かつては腕時計などの賞品の贈呈が多かったが、社員からは歓迎されないため、カタログギフトや商品券、旅行券などの現金相当の賞品が主流になっている。今後も、選択の自由度の高い賞品が中心となるだろう。

 とはいえ、単に商品券を贈るだけでは、期待される効果につながっているかは分からない。「金券ショップで換金して終わり」のケースもあるのだ。従業員のやる気向上などにつなげるためには、例えば表彰とリフレッシュ休暇をセットで贈与する、商品券や旅行券の利用状況・満足度を把握するなどの仕掛けが必要であろう。