企業の社員向けのいわゆる「BtoE(Business to Employee、従業員向けビジネス)市場」に参入するユニークな企業が最近増えている。最大のメリットは、集客が不要なことだ。つまり、顧客となる社員は、毎日出社して“売場”に集まってくる。あとは、彼ら/彼女らの要望を見極め、それらを満たす商品やサービスを提供すれば商売が成り立つわけだ。

置き薬方式で社食を展開する「オフィスおかん」

 株式会社おかんの沢木恵太社長も、そんなBtoE市場の可能性に目をつけた一人。今年3月に「オフィスおかん」というサービスを始めた。簡単に言うと、「富山の置き薬」の売り方を“社食”に取り入れたサービスだ。導入企業に薬箱の代わりに冷蔵庫を設置し、賞味期限1ヵ月程度の惣菜などを定期的に配達・補充して置いておく。従業員は好きな時にレンジで温めて食べられる。「便利なコンビニも職場からはある程度距離がある。その“ラストワンマイル”を埋めるサービス」と沢木さんは言う。

食事やコスメ、生野菜まで会社に売りにくる!<br />オフィスに広がる“富山の置き薬”商法<br />社食サービスで提供する惣菜を持つ沢木社長。後ろの右が、少人数オフィス向けの冷蔵庫

 惣菜はハンバーグやサバの味噌煮など主菜から、ひじきの煮物、切り干し大根といった副菜まで多種多様。ご飯やスープも提供する。従業員は商品1個につき100円~200円を備え付けの料金箱に入れ、購入する。商品は、無添加、無化学調味料など健康面に配慮しているのが特徴だ。

 ビジネスモデルとして優れている点は、導入企業から月額基本料金(従業員1人につき200円)や商品代金の一部(1個につき220円)を徴収していることだ。例えば、社員数120人で4分の1の社員が週3個利用する場合、約10万円を企業側が負担する。オフィスおかんにとっては商品が売れても売れなくても、毎月安定した収入が見込める。

 もし本格的な社食を導入するとなると、初期費用で数百万円、運営費で毎月数百万円はかかるという。オフィスおかんなら、低予算で「社食」という従業員に喜ばれる福利厚生を実現できるため、導入企業にもメリットはある。