人口が減り、高齢者が増え、新築住宅の供給量が縮小しつつある日本。これから建てるのは本当に良質の、次代に引き継ぐ価値のある家が望ましい。ではどうしたら、そんな住まいを建てることができるのだろうか。建築家と一緒にガエハウス(東京)と、ガエまちや(京都)という2軒の家を建てたライターの永江朗さんに、施主としての取り組み方を聞いた。

最初のステップは
家の企画書を書く

フリーライター・書評家
永江 朗(ながえ・あきら)

1958年、北海道旭川市出身。法政大学文学部哲学科卒。西武百貨店系洋書店アール・ヴィヴァン勤務、雑誌「宝島」「別冊宝島」編集部を経てフリーライターに。2008~13年、早稲田大学客員教授。13年より近畿大学非常勤講師。日本文藝家協会理事。ガエハウスを描いた  『狭くて小さいたのしい家』(原書房)、ガエまちやを描いた『そうだ、京都に住もう。』(京阪神エルマガジン社)、近著『誰がタブーをつくるのか? 』(河出ブックス)ほか著書多数。

 夫婦で賃貸暮らしを続けていた永江さんは、40代に入り「住み慣れた愛着のある街に住み続けたい」と、家造りを決意した。土地を探しながら、最初に取った行動は「建築家に依頼の手紙を書く」こと。このとき「建物と設備の予算は2000万円」と明記している。

 依頼した建築家はアトリエ・ワン(塚本由晴・貝島桃代両氏によるユニット)。すぐに打ち合わせを行うことになり、永江夫妻は企画書をまとめた。

 その内容が非常にユニークだ。美しく、かっこよく、愛嬌がある家。持っているインテリアとの親和性。ひとつながりの空間。厚化粧より素材感。完成しない家(新築時がベストではなく、空気を吸い、雨に打たれ、日に焼かれ、ほこりがたまったり、掃除したりの繰り返しによって、だんだん美しくなる家)。ポジティブなコストダウン。さらに絶対に欲しいものは何かなど、要望を詳細につづっていった。

「こうした企画書は、互いの考えを整理するのに役立ちます。結婚して20年もたつ夫婦でも、相手が『そんなことを考えていたのか』と、驚いたり。具体的にまとめて伝えることで、建築家も発想を刺激され、イメージが膨らみます」(永江さん、以下同)

 新築であれば最初にモデルルームやモデルハウスを訪ねる人が多いが、情報はただ集めるだけでなく、整理して自らの要望にまとめ上げることが大事。そして明確に建築サイドに伝えることが重要。これは建築家と建てるケースにとどまらず、多くの専門家と共同で作業する家造り全般にいえることだ。