M&A(企業の合併・買収)市場が、リーマンショック前の活況を取り戻しているという。業績回復基調にある大企業は、株主からの成長期待に応えるためにも規模拡大や事業多角化の手段として買収を、事業承継問題が深刻化している中堅・中小企業はその解決策として自社売却を、というのが主なニーズだ。だが、M&Aの仲介費用、つまり、報酬体系は各社で異なっており、たとえM&A不成立でも、着手金などの費用が発生することに抵抗感があるとの声もある。こうした現状に一石を投じ、報酬体系を明示して「完全成功報酬」で仲介を行う専門会社も出てきた。その先駆的存在・インテグループの藤井一郎社長に、M&A市場の動向から見た報酬体系の在り方などを聞く。

fujii-1インテグループ 藤井 一郎 代表取締役社長  ふじい・いちろう
早稲田大学政治経済学部卒業後、三菱商事などを経て、2007年にインテグループを設立、代表取締役社長に就任。オーナー社長、上場企業、投資ファンドを顧客とし、M&Aアドバイザーとして業界トップクラスの成約数を誇る。主な著書に『トップM&Aアドバイザーが初めて明かす 中小企業M&A 34の真実』(東洋経済新報社)など。Photo by KUNIKO HIRANO

日本のM&Aは欧米の半分
市場拡大はこれからが本番

 政府の経済政策効果などもあって、大手を中心に企業業績は回復基調にあるが、そのような経済環境下で、「大手企業を中心に、企業買収への意欲が再び高まりを見せている」と語るのは、M&A仲介・アドバイザリー専門会社のインテグループ・藤井一郎社長だ。

 一方で、団塊の世代のオーナー経営者が70代にさしかかる今日、後継者問題はいよいよ深刻化している。こうした人々が、会社売却を事業承継の選択肢とするケースや、IT企業などの創業者が、会社を売却して得た資金で次の事業を始めるケースなども増えており、M&Aは企業が事業の継続を考える際の有効な選択肢として認知されてきた。

 実際、同社への企業売買に関する問い合わせ件数も増えており、藤井社長は、「経済規模から見ると日本のM&A市場は欧米の半分程度。例えば調剤薬局のように、圧倒的なシェアを持つ大手が存在せず再編の余地が大きい業界も多いので、長期的にはまだまだM&A市場は拡大する」と予測し、「これからが本番」を実感しているという。