葬儀社の不透明な価格と不遜な会社の姿勢に疑問を抱いた冨安徳久・代表取締役社長は、「日本で一番『ありがとう』と言われる葬儀社」を理念としたティアを名古屋で創業し、価格の透明化を打ち出して業界に革命を起こした。現在は中部・関西の基盤を強化しつつ関東進出にも力を入れている。ティアの現状と課題、将来の目標を聞いた。

ティア 冨安 徳久
とみやす・のりひさ・1960年愛知県生まれ。79年に山口県の大学入学式直前に葬儀のアルバイトから、18歳で葬儀の世界に入る。東海地方の互助会に転職後、独立を目指し、97年にティアを創業。98年、1号館「ティア中川」をオープン。2006年、名証セントレックスに上場。現在は東証1部、名証1部に上場。代表取締役社長。

──高齢者人口の増加によって葬儀需要は2040年まで増加傾向にあり、需要は現在の1.3倍に拡大すると予想されています。一方で少子高齢化から会葬者は減少し、葬儀単価は低下することが指摘されています。

冨安 少子高齢化の問題は、弊社を創業した1997年時点で課題となっており、事業計画に織り込み済みでした。また松下幸之助氏の教えである「商売の原点は相手が喜ぶ商品やサービスを提供して適正な対価を頂くこと」に従って、不透明だった葬儀の価格を透明で適正な価格に変えても経営が成り立つ仕組みを取り入れていたので、現在でも葬儀単価の低下の影響をほとんど受けていません。

──創業当時と葬儀の単価は変わっていないのですか。

冨安 創業初年度は64件の葬儀を行い平均単価は110万円台後半でした。現在は直営店だけでも7000件を超える葬儀を手掛けていますが、平均単価は110万円を切る程度です。

──地元名古屋市内のシェアは20%を超えています。上場企業として業界に与える影響も大きいことから、今後はさらなる価格競争を仕掛けてくる同業者が現れるのではないですか。

冨安 シェアが11%に達すると「影響シェア」と呼ばれ、自社の存在や施策などが競合他社に影響を与えるようになるそうです。価格競争は業界の悪しき習慣を変えるきっかけになると前向きに受け止めています。一方で経営努力は続けており、単価が90万円、80万円と下がっても適正な利益を確保できるように葬儀で用いる祭壇やひつぎ、葬儀付帯品などを中国から直接仕入れるといったコスト削減策を講じています。