商業や金融の街・日本橋と東京屈指の高級商店街・銀座エリアの中間に位置する京橋に、2016年秋、新たな複合施設が誕生する。「京橋再開発プロジェクト」によって、街は日本橋、銀座と一体となったにぎわいを形成。ビジネスと観光の拠点として名乗りを上げる。

永藤厚志
京橋事業部長

 東京都中央区京橋の地名は、東海道の起点である日本橋から京へ上がる時に、最初に渡る橋があったことに由来する。江戸期にあった塗師町、鍛冶町、大工町という地名から、町人の街であったことがうかがえる。

 日本土地建物が特定業務代行者の代表企業として事業推進とタウンマネジメントを行う「京橋再開発プロジェクト」は、東京駅の東側「日八京」(日本橋・八重洲・京橋)と呼ばれるエリアの中でも、東京メトロ銀座線の京橋駅直結という交通利便性の高い立地の大規模開発計画である。同社は、1960年に京橋に京ビルを竣工させて以来の関わりがあり、「思い入れがある街だ」と永藤厚志・京橋事業部長は言う。

「京橋は、江戸時代からビジネスと商業の中心として繁栄し、現在でも日本を代表する多くの企業の本社があります。地権者の方々も、京橋という土地を愛し誇りを持っています。一方で、小規模敷地が多く、建物の老朽化と街の再生という課題を抱えていました」

平日は働きたい街
休日は訪れたい街へ

京橋の地の利は抜群にいい。「京橋再開発プロジェクト」からJR東京駅まで徒歩5分という近さ。日本橋、銀座、築地も徒歩圏だ

「京橋を再生したい」という思いを持つ多くの地権者たちと、街づくりについて積極的な話し合いが行われた。2001年8月「京橋二丁目西地区まちづくり検討会」が発足。02年には京橋エリアが「都市再生緊急整備地域」に指定された。そして11年7月、再開発事業の認可を取得、「京橋二丁目西地区市街地再開発組合」が設立されてプロジェクトが本格的に動きだした。

 検討会発足からおよそ10年という期間を経て、街づくりの方向性もはっきりしてきた。

「この街で働きたい、この街で店舗を構えたいというビジネスの視点で選ばれることはもちろんですが、休日はあの街に行きたいという動機でも選ばれる街を創ることが当社のミッションです」

 再開発組合がビジネスパーソンを対象に実施した調査では、京橋エリアで働く人の47.9%が「京橋で働き続けたい」(オフィスを移転してほしくない)と答えている。これは都内の他エリアに比べて10ポイント以上も高い数字だ。

「ビジネスパーソンから京橋が支持されている理由は、東京駅の徒歩圏といった利便性の高さだけではありません。町人の街が持つ気さくさがあり、安くておいしい食事を提供してくれる店や何百年と続く老舗が点在しています。美術館や画廊も多く、『人の息づかいを感じる街』であることが評価されているのでしょう」

 一方で、土日の集客や街としての認知度向上にも力を注ぐ。「施設の竣工がゴールではなく、タウンマネジメントによる施設としてのにぎわいづくりと、京橋全体を含めたエリアマネジメントの展開を通じて、施設はもちろん、京橋アドレスの付加価値をさらに向上させていきたいと考えています」と意気込む。