全国のマンション管理組合から、困ったときの“駆け込み寺”として注目される外装専科。徹底して住民の立場に立ち、通常の30~40%は安価になるという同社の工事見積もりは、説明を聞くと理にかなったものだ。真に必要な修繕とは何か? 伊藤洋之輔社長に聞いた。

外装専科
伊藤洋之輔代表取締役社長

 あるマンションで実際に起きた出来事。大規模修繕に当たって、管理会社A社が出してきた見積もりは1億2400万円だった。この金額に驚いたマンション管理組合の役員が、外装専科に見積もりを依頼してきた。このままでは修繕積立金で賄い切れず、銀行からの借り入れか追加負担金の徴収が発生するからだ。

 外装専科の見積もりは6400万円。その金額を管理組合役員がA社に伝えると、6500万円の見積金額を再提案してきた。管理組合役員には疑問が生じた。5900万円の値引きとは何なのか? 結局その案件は、外装専科が手掛けることになったという。

「私がプロの立場で他社が提出する見積書を見ると、必要以上な工事、不要不急の工事が追加されていることが目に付きます」。外装専科の伊藤洋之輔社長はそう語る。

必要のない足場や
塗装を排除する

外装専科では、高額な「組み立て足場」を組むことを極力避け、ゴンドラなどを使う「つり足場」を積極的に使っている

 外装専科が他社と違う点は、まず足場に対するアプローチだ。ビルの外装工事に足場は付きものだが、費用が掛かるのも足場である。足場には「組み立て足場」と「吊足場」の二種類があり、外装専科ではブランコ足場を主に使用する。鉄骨を組み上げる「組み立て足場」の費用は高額で、修繕費の20〜30%ほど掛かるが、必要のないケースも多いという。「どちらの足場を使うかは、マンションのタイプと修繕内容によって選ぶべきで、特に傷みの少ない建物であれば、ゴンドラやブランコ足場でもしっかりとした工事が可能です。特にブランコ足場はもともと米国でダム建設のために開発された手法で、簡単に設置できコストが安いという長所を持ちます」。

最近手掛けた高層マンション

 さらに塗装の部分での違いは、通常、大規模修繕というと外壁塗装で「3回塗り」をする。しかし、「廊下やバルコニーの内壁など雨の当たらない場所は、3回塗りの必要はなく無駄なだけ。当社が行う外壁塗装の7割は、1回塗りで仕上がる『ワンコートシステム』を採用しています。雨の当たる外壁でも、傷みの少ない場合は亀裂などの下地補修後にワンコートシステムで塗装するだけで十分なのです」。

 また外装タイルについても、過剰に補修枚数を増やす「貼り替え主義」ではなく、マンションの資産価値を落とさない最小限の貼り替え工事が理想だという。