設備投資に対して税制の優遇が適用される「産業競争力強化法」の施行で、企業の投資意欲の高まりが期待される。地域企業の高度な技術力、ビジネス創出環境の整備など地域の力に注目されている。
(日本立地センター専務理事 德増秀博)

地域固有の高度な技術が
企業の立地意欲を動かす

 経済産業省の「工場立地動向調査結果(速報)」によると、2015年上期(1月~6月期)の工場立地件数は465件、工場立地面積は522ヘクタールとなっている。どちらも水準は高くないものの、景気回復への期待は感じ取れる。というのも、14年に施行された「産業競争力強化法」により、設備投資に対して税制の優遇が適用されるため、今後、企業の投資意欲の回復が期待されるからだ。

 業種別に立地動向を見ると食品関連が堅調で、中でもコンビニエンスストア用の弁当の総菜工場などの立地が目立つ。高齢者向け食品や介護・病院食などに対応した、工場の再編が進んでいる。

 一方、倉庫・大型物流施設の増加も目立っている。背景には、メーカーがコアビジネスへの集中を図るために、自社の物流機能をアウトソーシングするようになったことや、保管・仕分け・加工などの機能を併せ持つ総合物流施設へのニーズが高まってきたこと。さらにドライバーの人材不足に伴う効率的な配送システム構築の一環としての施設建設などがある。

地域資源を活用した
誘致戦略が求められる

「産業競争力強化法」の施行によって打ち出された政策で注目したいのは、118.7億円の新規予算を計上する「ものづくり中小企業連携支援事業」だ。これは、個々の中小企業では対応できない経営資源の解決(新製品の開発や共同受注体制の構築など)と、成長発展を目指す活動を支援するもの。特定ものづくり基盤技術(鋳造、鍛造、切削加工、めっきなど)の高度化に向けた研究開発、技術流出防止や模倣品対策を目指す試作開発・販路開拓、優れた技術の事業化に向けて行う実証などについて、中小企業・小規模事業者、地域の大学などの研究機関が連携して行う取り組みに対し補助金が交付される。

 中小企業が国内で生き残るためには、こうした支援制度を活用して、新しい技術の開発や既存技術の質を高度化することが重要になる。さらに、地域の大学で輩出される人材が地域で働き、能力を発揮できる仕組みづくりも求められる。

 従来、企業誘致は地域活性化対策の中心に位置付けられ、工業団地の造成や誘致企業に対する優遇制度などが整備されてきた。しかし、今後の地域活性化の方向は地域資源の活用であり、地域企業が持つ技術力をさらに高めて、全国的なビジネス展開ができるような戦略が必要となる。地域の中小企業のイノベーションを支援し、競争力のある地域づくりを行うことが、地域外からの企業の進出にもつながっていく。