2015年から16年にかけて、都心部の港区では平均坪単価1000万円(100平方メートルで約3億円)の物件が現れ、武蔵小杉や横浜みなとみらい、浦和、国分寺といった郊外拠点エリアでも坪単価330万円(70平方メートルで約7000万円)をはるかに超える新築マンションが目立ち始めた。しかし、首都圏全域が高額化しているわけではない。実感としては、都心の一部と郊外のほんの一部だけが高額化している印象。多くの場所は、まだ納得水準にあるし、なかには「安いなあ」と思えるエリアもある。そんな納得価格の注目マンションを都心から20キロメートル以遠で探してみたい。

郊外人気物件が備える
10の要素に注目

 都心から20キロメートル以遠の郊外エリアで注目すべきマンションを探す場合、条件は「価格の手頃さ」だけではない。「安かろう、悪かろう」では買う気にならないし、買ったとしても住み始めてからの満足度は低いはずだ。
では、「価格の手頃さ」に加えて、どんな要素が求められるのか。

 それらを、人気物件の事例から探りたい。

「即日完売」を連発している大規模マンション「プレミスト高尾サクラシティ」(外観完成予想CG)

 たとえば、大和ハウス工業とコスモスイニシアが分譲するプレミスト高尾サクラシティがある。これは、JR中央線と京王線「高尾」駅を最寄りとする郊外エリアで、「即日完売」を連発している大規模マンションだ。

 昨年6月に行われた第1期分譲では当初予定の100戸を130戸に上積みして、即日完売。その後、半年ほどで251戸が販売済みとなり、3月21日から行われた第4期50戸も即日完売した。

 建設地は「高尾」から徒歩6分。「東京」駅からの距離は20キロメートルをはるかに超える53.1キロメートル。郊外、それも山梨県に近く、高尾山の登山口となる場所だ。そんな郊外マンションが人気を集めている理由は何か。

 まず、サクラシティ全体は大型商業施設とマンション、一戸建て住宅地の複合開発であり、街づくりのスケールが大きい。マンションも416戸の大規模だ。そして、商業施設内にはスーパーマーケットなどとともにクリニックも入る予定で、隣接地にはすでに真新しい保育園が完成している。

 さらに、公立の小学校も近いなど、生活が身近で完結することになる。

 加えて、「高尾」からは、JR中央線の上り始発電車が出るため、座って通勤しやすいという利点もある。朝7時台と8時台に出る始発電車は9本ずつある。ちなみに、「都心からの帰宅時、高尾は終点になるため、うっかり大月行きに乗らなければ寝すごす不安がない」という利点もある。

「高尾」は、八王子市内でJR「八王子」駅から2駅目。中央特快利用で「新宿」まで40分強、「東京」まで1時間弱。さらに、京王線を利用できるという長所もある。「自然が身近」で、「思ったより便利」という立地条件も、注目を集める理由だろう。

 JR中央線沿線は人気が高く、「吉祥寺」「国分寺」はもちろん、「立川」や「八王子」でも地価が上昇。「立川」や「国分寺」の駅周辺では、都心部と変わらない価格設定のマンションが次々に登場。価格の高さにかかわらず、好調に売れたり、あっという間に売り切れてしまったりしている。

 人気の高いJR中央線沿線で、サクラシティは南向き中心・平均73平方メートルの広さで、3LDKが3000万円前後からの設定。ディスポーザーやバルコニーの外部水栓が標準仕様となり、省エネの工夫を凝らしたエコ仕様。駐車場はすべて平置きもしくは自走式で、月額使用料が1000円から……納得感あふれる内容・価格設定であることも高人気の理由だろう。

 このサクラシティから、首都圏の郊外で人気物件のキーワードがいくつか見えてくる。「大規模開発」「新しい街」「スーパーマーケット」「保育園」「ゆとりある住戸面積」「建物が高品質」「納得価格」など。これに、「魅力ある地」と「始発駅」、「駐車場使用料が安い」を加えて10要素。それらすべてを備えていなくてもよいだろう。20キロメートル以遠で、10要素をなるべく多く備えている物件が狙い目となるわけだ。

 再開発などで誕生する新しい街で、納得できる価格設定のゆとりある3LDK。マンションの近くにスーパーマーケットや保育園があり、家族での生活がしやすい。最寄り駅から始発電車で座って通勤できる場所であればなおよい……そんなマンションは実際に人気が高く、あっという間に売り切れてしまう可能性があるので、要注意である。