注文住宅から土地資産活用、断熱材、リフォーム、介護保育まで多彩な事業を展開する桧家ホールディングス。業界の常識にとらわれることなく、常に「本当の価値」を提供することにこだわり、積極的なM&Aなどを通じて事業の幅を広げてきた。躍進を遂げる「HINOKIYA」の原動力を探った。

──当初は、注文住宅メーカーとして創業されました。

近藤 1988年に埼玉県で創業し、地域に密着しながら、お客さまに喜ばれる注文住宅造りに励んできました。

 2007年に株式上場を果たして以来、M&Aなどを通じて事業エリアの拡大や事業の多角化を推し進めてきました。現在でも主力の注文住宅事業が売上高の6割近くを占めていますが、土地資産活用などを中心とする不動産事業、断熱材事業が第2、第3の柱として売り上げに大きく貢献しています。

 11年に持ち株会社制に移行して桧家ホールディングスに社名変更し、15年1月にはグループを再編・合併しました。

持続的付加価値の創造が
全ての発想の原点

近藤 昭
桧家ホールディングス
代表取締役社長

こんどう・あきら 1967年生まれ。慶應義塾大学卒業後、大手生命保険会社、外資系保険会社勤務を経て、2001年東日本ニューハウス(現・桧家ホールディングス)入社。専務取締役、副社長を経て09年より現職。

──事業多角化の背景には、どのような考えがあったのでしょうか。

近藤 それぞれの業界で当たり前になっていることの中には、「それが本当にお客さまや世の中のためになっているのか?」と疑問に感じるようなことがいくつもあります。「おかしい」と感じたことに、私たちなりの答えを考えながら新しい価値をお客さまに提供してきました。

 当社は09年2月に断熱材メーカーを買収していますが、これは日本の木造戸建住宅が「冬は寒くて当然」という前提で販売されていることに疑問を感じたからです。本当に求められているのは、冬でも暖かく、一年中快適に暮らせる住宅であるはず。だったら、暖かい家を当たり前に提供しようということで、自ら断熱材を手掛けることにしました。

──常識への挑戦ですね。

近藤 現在の中期経営計画で、お客さまにとっての“持続的付加価値を創造する”ことを目標に掲げていますが、これこそが全ての発想の原点です。今住むための住宅だけでなく、将来のことも含めて、お客さまの暮らしの全てを支援するワンストップ・ソリューション・カンパニーを目指したいと考えています。

 介護保育事業に取り組んでいるのも、まさにその一環です。

相続対策にも効果的な、新たな土地資産活用法『ゼロからわかる「戸建賃貸」入門』(ダイヤモンド社刊)

──『ゼロからわかる「戸建賃貸」入門』(弊社刊)の中で、戸建賃貸の建設や不動産の組み替えといった土地資産活用を積極的に勧めています。それはなぜなのでしょうか。

近藤 ここ数年、地価の上昇や相続税制の改正などによって、土地・建物を所有している方の相続対策に関するニーズが年々高まっています。しかし、多くの不動産業者が提案する土地活用の選択肢は限られており、そのほとんどは賃貸アパート・マンションの建設に偏っています。

 確かに賃貸アパート・マンションを建てれば土地の不動産評価額を下げられるメリットはありますが、1棟当たり数千万円から数億円もする建築費用を要し、利回りはかなり低くなります。また、人口減少とともに空き室が増えるリスクもあります。つまり、相続対策としては有効でも、事業として立ちゆかなくなる危険を伴うわけです。

戸建賃貸「プライムアセット」

 その点、戸建賃貸であれば、1棟当たり1000万~1500万円ぐらいで建てられるので利回りも高くなりますし、借入金の返済も1棟ものの賃貸アパート・マンションに比べれば早く完了します。

 しかも、解体費用が数百万円と割安なので、ニーズの変化に応じた用途変更もしやすい。非常に柔軟性の高い土地資産活用法だといえます。