国内立地を牽引してきた自動車関連産業が海外生産化を進める一方、環境・エネルギー産業の国内設備投資が活発だ。ポスト自動車として航空機産業への参入に向けた動きも全国で出始めている。これからの企業立地は、地域が持つ技術力を基盤にして、新たな産業の胎動に着目し、グローバルな視点を持った立地戦略が必要となる。

 

日本立地センター常務理事 德増秀博

 国内製造業が海外に生産拠点を移す動きを加速させている。2008年の業種別海外生産比率を見ると、電気機械が41・1%、輸送用機械が39・2%と群を抜いて高い。

 これまで工場立地を牽引してきた加工組み立て業種、なかでも自動車関連産業はリーマンショックの影響を強く受け、国内立地を大幅に減少させた。自動車産業は輸出拡大よりも現地生産化が進んでおり、現地の需要に合った自動車を供給していくことが、企業が生き残るための重要なポイントになっている。関連産業は生産設備の余剰感が強く、今後も設備投資への期待は小さいものと考えられる。

 一方、食料品、飲料などの地方資源活用型業種は減少していない。食の安全・安心への意識の高まりから、国内生産の重要性が見直されているものと思われる。

積極的な投資が続く環境・エネルギー産業

 国内立地件数が減少するなか、新たな分野の立地の動きも見えてきた。

 環境・エネルギー関連産業の積極的な設備投資である。環境・エネルギー産業には、水処理装置などの環境装置、スマートグリッド(次世代送電網)構想で注目を集める送電システム、風力発電などの自然エネルギー活用システム、太陽電池、二次電池、燃料電池などの次世代電池といった多様な製品がある。

とりわけ次世代自動車の普及、太陽電池の導入促進という政策の後押しなどにより、二次電池や家庭用燃料電池に関係する設備投資が活発だ。また、電池の本体だけでなく、化学、非鉄金属といった素材分野でも生産増強が図られている。

 政府は09年度第2次補正予算で「低炭素型雇用創出産業立地推進事業費補助金」(約300億円)を計上し、3月にリチウムイオン電池やLED、電気自動車などのメーカー42社に交付した。各社は設備の増強に活用しており、この分野では今後も、新規立地を伴う積極的な投資が行われることが予想される。