リーマンショック以来の長期停滞傾向に歯止めがかかった。新しい大学入試を見据えた入試も始まるなど、その内実にも変化が見られる。16年の状況を振り返り、17年入試を展望しよう。

大学入試改革を見据えた動きに注目

 首都圏の中学受験は、2016年入試で変化を見せている。

 2008年秋のリーマンショック以来沈静化一色だったが、付属校が受験者増に転じ、公立一貫校の適性試験と併願しやすい私立の適性型入試の受験生も増加したことが主要因である。

 加えて、新しい大学入試制度の方向に沿った新入試開設なども応募増の要因となった。

 一方で、上位校は難度・倍率とも堅調な状況が続き、中下位校との二極化は16年入試でも拡大した。

 15年のサンデーショックを経て女子校は、14年並みの状況に全体としては戻ったものの、中堅共学校に勢いがあり、中下位女子校は苦戦を強いられた。

 もっとも、15年入試で中堅校は増加基調だった男子校が16年入試ではその多くが緩和基調に転じたように、男子校・女子校とも人気中堅校は隔年で増減を繰り返していることも覚えておきたい。

 17年入試に向けて、16年入試で押さえておきたい点は、全体の受験者数沈静化の一方で、一貫して増加基調を示しているのが、難易度で難関校の次のランクにある上位校(四谷大塚偏差値で59~55)の受験者層である。

森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾を経営後、88年から現職。中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーhttp://oya-skill.com/をほぼ毎週主催。著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』『中学受験 入りやすくてお得な学校』(ダイヤモンド社)。

 16年入試でそのことが端的に表れたのが2月2日の状況で、男子では桐朋が初めて2月に2回目の入試を行い、相応の受験生を集めた。女子では逆に鷗友(おうゆう)学園が2日の入試を廃止したため、吉祥女子、洗足学園の2日入試が大幅に難化した。こうした事実は、これらの難度の学校の受験層が厚みを増しているからこその現象といえよう。

 そうしたいわば私立中受験の中核層の一方の極に対して、今や、受験者数で1万8000人を数えるに至った私立適性検査型入試受験の存在は、公立一貫校の併願ニーズとはいえ、のべ数だけでいえば全体の公立一貫校実受験者数(約1万7000人)をオーバーする規模まで急成長している。

 前年比でいえば3年連続で、120%(14年)、140%(15年)、180%(16年)と急拡大しており、そのまま私立中学に進学する率は低いまでも、合格率も高く、従来の私立中受験より費用と労力が大きくカットされるだけに魅力的といえる。

 加えて、17年入試は16年に実施された新しい大学入試に対応する中学入試がトレンドとなって、さらに入試の多様化が進みそうだ。最も早く新しい大学入試への構えを入試で示した宝仙理数インターのリベラルアーツ入試や、都市大付のグローバル入試などに代表されるように、前述の適性検査型ともども従来の選抜では私立中学受験をしなかった層に訴求しているのが、特徴だ。

 なお例年、東大合格者数大幅増加校が人気校になる。15年入試は海城と渋谷教育学園渋谷(渋々)だったが、16年入試はいずれも1月入試の渋谷教育学園幕張(渋幕)と、浦和高を凌いだ栄東だった。したがって、東京・神奈川入試への直接的な影響はなさそうだ。

 


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