家の査定価格は、なぜ不動産会社によって違う?
成約事例の選び方から、営業マンの能力を見抜こう

【第3回】2018年6月24日公開(2020年6月10日更新)
梶本幸治:株式会社レコ 取締役・コンサルティング本部長

複数の不動産会社にマンションや家の売却を依頼すると、提示される「査定価格」にばらつきがあることも。実はそれ、査定の参考にする「成約事例」の違いによるものが大きいのです。成約事例をどうやって選んでいるかを知れば、その不動産会社や営業マンの力量を測ることができます。

査定する物件と過去の成約物件を比較するために点数化

 家やマンションを売る際に、不動産会社がくれる「不動産価格査定書」は特段、書式が決まっているものでは無く、内容がまちまちです。

 しかし、公益財団法人不動産流通推進センターでは、不動産会社向けに「査定マニュアル」を提供しており、このマニュアルに従った査定を行っている不動産会社が多いように感じます。

公益財団法人不動産流通推進センター: 消費者保護と不動産流通のレベルアップを目指し、レインズ(不動産流通標準情報システム)の構築、価格査定マニュアルの作成・普及、公認不動産コンサルティングマスター登録制度、各種教育事業の実施等、多くの公益事業を推進している業界団体)

 この査定マニュアルでは、戸建住宅・住宅地(土地)・マンション等、物件の種別ごとに査定の方法を定めており、例えばマンションの場合、下記の流れで評価してゆきます。

  • 《マンション価格査定マニュアルによる評価の流れ》
  • (1)適切な成約事例マンションの選定
  • (2)査定マンションと、成約事例マンションの評点算出(以下の項目で加点・減点)
  •   ・基本情報
  •   ・交通・立地条件
  •   ・住戸位置
  •   ・専有部分
  •   ・維持管理状況
  •   ・敷地・共用部分
  • (3) 流通性比率で、評点を調整
  • (4) 査定価格を算出
  •  

 査定価格は次のように求めます。まず、「査定するマンションの部屋」と「成約事例となるマンションの部屋(過去に実際に売れた近隣マンションの事例)」を上記の各項目ごとに評価して、マンションの価値を点数化します。

「査定マニュアルだと、駅徒歩6分が標準で、それより遠いほど評点が引かれる仕組み。査定マンションは駅徒歩9分だから評点-4.0。成約事例マンションは駅徒歩13分もかかるので、評点は-0.8」
「査定マニュアルだと、3階を標準として、それより高いフロアーほど、評点が高くなる。査定マンションは4階だから評点+0.2。成約事例マンションは2階だから評点は-1.0」

 といったように加点、減点し、最終的には「査定マンションの部屋」の評点が、「成約事例マンションの部屋」の何倍になるかを計算します。最後に、成約事例の価格に、その倍数をかけて、査定価格を算出します。

 ここではマンションの査定方法をご紹介致しましたが、戸建住宅や住宅地(土地)でも同じような考え方で、その各評価項目に評点を振って査定価格を算出します(なお建物部分については原価法を採用し、新築時の価格に対して設備の耐用年数や維持管理状態を加味した残存価格を求めています)。

【参考記事はこちら】
>>>不動産の売却価格(成約価格)が見られないため、日本ではどんな不都合なことが起こっているのか?

査定価格のバラツキは、成約事例の選定にあり

 ここまでお読みいただいている中には、次のように思われた方もいらっしゃるでしょう。

「査定価格の計算方法にガイドラインがあるなら、どの不動産会社で査定しても同じような価格になるのかな?」

 確かに不動産のプロが査定価格を算出した時に、価格が全く異なるケースは稀です(ちなみに、非常に高い査定価格を提案してくる不動産会社や、逆に低すぎる査定価格を提案してくる会社は信用出来ませんよ)。

 しかし、不動産会社ごとに査定価格のバラつきがあるのも事実です。それでは、なぜ、不動産会社ごとに査定価格が異なるのでしょうか。

【参考記事はこちら】
>>>不動産を売却する際の「査定価格サービス」は、どうして実態よりも高めになりやすいのか?

成約事例は価格より「誰が買ったか」が大事

 これは、さきほどご紹介したマニュアルの「(1)適切な成約事例マンションの選定」の部分が不動産会社によって異なるからだと考えられます。

 冒頭でもご説明した通り、査定価格の算出にあたっては周辺で実際に売れた「成約事例」を参考にするのですが、この「成約事例」に関して、どの事例を用いるかは不動産会社が任意に選択します。ですから、「高く売れた事例」ばかりを用いると査定価格は高くなりますし、恣意的に「安く売れた事例」を用いれば査定価格は低くなります。

 従って、「適切な」事例選定の必要が出てきます。

 そして、ここからが大切なのですが、この「成約事例」に関しては、単に「いくらで売れたか?」だけではなく「誰が買ったか?」も大きな意味を持つのです。

 例えば、東京都三鷹市の中古マンションが売れたとしましょう。

 その物件の買い主が同じ三鷹市内にお住まいの方なら、三鷹市内の事をよくわかった上で購入されるでしょうから、この事例は「成約事例としてうってつけの物件」といえます。

 次に買い主が、小金井市にお住まいだった場合を考えましょう。三鷹市の隣街で同じ鉄道沿線の小金井市ですが、既に三鷹市内にお住いの方に比べると三鷹市に関する理解が不足していると考えるべきであり、その点を考慮するとこの事例は「成約事例として用いても特に問題はない程度の物件」といえます。

 そして、この買い主が広島県から転勤で移って来られた方としましょう。当然、三鷹市内に土地勘は無く又、転勤であればタイトなスケジュールの中で購入された可能性があり、熟考の上で契約したとは言い難いかも知れません。そうなるとこの事例は「成約事例として用いてはいけない物件」といえるでしょう。

適切な成約事例を選定するには現地調査が不可欠

 このように申し上げると「買い主が物件の近くに住んでいて、周辺の事を理解した上で購入された事例」が良いように感じますが、一概にそうとも言い切れないのです。

 例えば、その物件の隣にお住まいの方が買い主だった場合を想像して下さい。

 昔から「隣の土地は倍を出してでも買え」や「隣の土地は借金してでも買え」という言葉があるように、近隣にお住まいの方は高値で不動産を購入してくれる可能性が高いのです。

 その物件に対して「思いれが強すぎる買い主」が購入した事例も、価格査定時に用いる事例としては不適切なのです。

 つまり、不動産価格査定を行う不動産会社は、これら成約事例の特殊要因を考慮した上で査定価格を算出する必要があります。

 最近では個人情報保護の問題から、不動産会社と言えどもこのような特殊要因情報を入手する事は難しくなってきましたが、それでも「成約事例物件を実際に現地で見て、その特徴を把握する」くらいの事は、最低限行うべきでしょう。

 成約事例物件も見ずに、売り主に査定価格を提案する等はもっての他です。

その地域の生情報を元に査定してくれる業者に依頼を

 そこで、査定を依頼された不動産会社の営業担当者に対し、次の質問をぶつけて下さい。

「この成約事例に使っておられるマンションって、どんな方が購入されたのですか?」
「成約事例のお家って、どのくらいの販売期間で売れたのですか?」
「成約事例の家ですが、あなたは実際にご覧になりましたか?」

 このような質問を受けて、しどろもどろになる場合は不動産マーケットを掴んでいない可能性が高く、そのような営業担当者に売却を任せてはいけません。

 居住用実需不動産は地域を熟知している事が重要であり、「数字遊び」のような方法で不動産価格を算出する不動産会社や営業担当者を信用してはいけません。

 公益財団法人不動産流通推進センターの査定マニュアルは非常に優れたものですが、事例選定時は「買い進み、売り急ぎの特殊な事情がなく、通常の条件下で取引がされた事例」(マンション価格査定マニュアルより)を選ぶようにとしています。査定価格の基礎となる「成約事例情報」に疎い不動産会社では、その販売力にも疑問符が付きます。

 少しでも高く不動産を売却したいとお考えなら、綺麗なオフィスでパソコンを開き、数字だけで居住用不動産の査定をするような不動産会社では無く、多少野暮ったくても現地を踏み、その地域の活きたマーケット情報をもとに査定をしてくれる不動産会社に販売を任せましょう。

 不動産会社の知名度や会社の規模、オフィスの綺麗さだけで選ぶのではなく、その地域をどれほど知っているかで確認し、信頼のおける不動産会社に不動産売却をご依頼ください。

 なお、「価格査定書」だけを見て、ダメな不動産会社かどうかを見分けるノウハウは、下記の記事で解説していますので、こちらもご覧ください。

【参考記事はこちら】
>>>「不動産価格査定書」の見方と注意点を解説! 業者が優秀かどうかは、「流通性比率」で分かる!

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