株式レポート
2012年4月24日 マネックス証券

第14回 材料のない「材料株」 - 広木隆の「投資の潮流」

前回この欄に書いた「ストラテジストと占い師」は「最後のオチが分からない」というクレームが頻発した。この部分である。

<TVドラマ「北の国から」では飼っている馬に名前をつけなかったというエピソードが出てくる。昔の北海道は暮らしが厳しくいずれ馬を手放すことになるから情が移るのを避けるためだ。相場は今また難しい局面を迎えている。マネックスのストラテジストに就任して以来、相場の先行きで悩むのは過去5回ほどあった。筆者も亀を飼っているのだが、6代目のペットの亀の甲羅を見ながら、つくづく名前をつけないで良かったと思っている。>

隣の席に座るチーフ・エコノミストの村上でさえ、「この話の結論は、広木さんは亀をお飼いになっているということですね」などと言う始末。そのまんまじゃないか!

伝わらなかった話のオチを自分で解説するのも、なんとも情けないものだが、仕方がない。相場で悩んだのが過去5回。今の亀が6代目。過去相場で悩んだ回数と同じ数だけ亀とお別れしてきたというわけだ。なぜか?相場の先行きを占うのに、亀の甲羅を使って亀甲占いをしてきた、そして今回もまた...、というオチなのだが、ひねりすぎたようだ。

前回のコラムではAIJ事件に始まって、詐欺師、占い師、自己啓発本など怪しげなものに騙されないためには、データの裏づけを確認することが大切と述べて、それはストラテジストの予想を聞く場合も同じだと語った。その意見に合理的な根拠があるかどうかが重要である。「合理的根拠」の対極にあるのが「材料株」だろう。

この「材料株」というもの、名前のわりにはその材料が株価上昇の根拠としては希薄なケースが多い。そもそも相場の世界では「Buy on rumor, sell on fact (噂で買って、事実で売る)」と言われるくらい、材料が株価に織り込まれるのは速い。何かの材料で一旦人気化した銘柄が「材料株」とレッテルを貼られてその後も折に触れ賑わうのは、往々にしてその値動きの良さだけに着目した売買がほとんどである。その最たるものが、「仕手系材料株」、一般に言う「仕手株」だ。昔の仕手は「街の投資顧問」(=情報屋)などを使って仕手情報を広めたものだが、インターネットが普及した現在はその手間が省けて、簡単に「提灯買い」がつきやすい。最近も、ある大物仕手筋のサイトが更新されたことをきっかけに人気化した銘柄が1週間で倍になる急騰劇を演じたことがあった。

こうした仕手株には株価が上がる明確な材料はない。あるのは「仕手筋が買っている」という噂と値動きの激しさだけである。買うから上がる、上がるから買う。まさに投機以外の何ものでもない。では、そうした「投機」と、企業業績などを丹念に調べ長期的な値上がりを期待して行う「投資」との間に、決定的な差があるかと言えば、そんなに大きな差はない、というのが筆者の持論だ。

企業が生み出す利益やキャッシュフロー、あるいは企業価値などファンダメンタルズに着目して売買することを「投資」、それらファンダメンタルズに関係なく、値動きや需給の思惑だけで売買することを「投機」としよう。いま、あなたがファンダメンタルズの面から「割安な」銘柄を発見したとする。しかし、その割安銘柄は、ファンダメンタルズの良さを、あなただけでなく、より多くの投資家に評価してもらわなくては株価は上がらない。結局は、株価や値動きなどから「他の投資家がその銘柄をどう評価するか」ということを知る必要が生じる。他の投資家がどう動くか値動きから推し量りながら売買するのは「投機」ではなかったか?ケインズが株式投資を美人投票に喩えた所以である。

チーフ・ストラテジスト 広木隆