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「相続財産は家だけ」で遺産分割でもめた場合、
自宅を売却するときとしないときで
相続財産はどう変わるのか試算してみた

2018年10月29日公開(2021年5月25日更新)
冨田建:冨田会計・不動産鑑定株式会社 代表取締役

相続が発生したけど、「相続財産は母が住んでいた家くらいしかない」ということが多々ある。相続財産が少ないから、遺産分割で揉めないかというと、そうでもない。相続人が複数いる場合、不動産はそのままでは分割できず、遺産の分割をめぐり揉めることが多くなるのだ。不動産鑑定士兼公認会計士の冨田建氏が、よくある相談事例をもとに、ケースごとに相続財産がどうなるか試算してみた。

亡き母と同居していた兄の子供が実家の売却を拒否

 相続財産が実家だけといケースはよく揉めると言われる。そこで今回は、よくある相談事例を小説調で説明しよう。

 Aさんは悩んでいた。

 Aさんのお母さんが亡くなり相続が発生したのだが、相続人にはAさん自身、姉のB子さん、亡くなっている兄の息子のCさんがいた。このうち、Cさん一家は亡くなった母の自宅に同居していた。

・亡くなった人=母親
・Aさん=本人
・B子さん=姉
・Cさん=亡き兄の息子

 問題は、母は遺言を遺さず、かつ、自宅以外の財産をあまり遺さず亡くなったこと。

 民法で定められた原則的な遺産配分の割合(法定相続割合)でいけば、亡くなった人(被相続人)の子供達だけが相続人の場合は均等に人数割りとなり、亡兄に帰属する遺産の割合は被相続人(亡くなった母親)の遺した全財産の1/3となる。

 代襲相続と言って、相続人である子も亡くなっていて更にその子ども(孫)がいる場合は、原則としてその子ども(孫)が代わりに相続できる。Cさんの場合は他に兄弟姉妹がいないため1/3をまるまる代襲相続できる。ただ、1/3では、Cさんの立場からすると、被相続人の遺した自宅をまるまるすべて、自分のものにはできない。

 そこで、Cさんは主張した。単なる居候だったのに「被相続人の面倒を見ていた」として寄与分、つまり「生前に特別に被相続人に貢献した分の遺産配分に際しての優遇」の主張までしはじめた。寄与分を認めさせて被相続人の遺した自宅価値を上回るだけの遺産配分額を確保するのが狙いだった。

 「この不動産はオレのものだ。不動産売却はせず、代償金も払う気もない」(Cさん)

 遺産が自宅だけで他にあまり資産がない場合、相続人の一人が自宅を相続するかわりに、他の相続人に「高額な財産を相続した見返りとしての他の相続人に対する清算金」を支払うことがある。それを代償金というが、Cさんはびた一文払う気はないという。

 当然、AさんやB子さんは反発した。結果、揉めごとになっているのだが、では、こうなる前にどのような対策が必要であったのであろうか。

 実は、Cさんは、亡くなったおばあさんに恨みがあった。

 Cさんは医学部に行けるほど勉強はできたが、Cさんの両親は浪費家で学費を工面できず、学費をおばあさんにせがむも断られた過去があったからだ。結局、Cさんは冴えない薄給の普通の会社員になり、事あるごとに「あのとき、おばあさんが学費を援助をしてくれれば」と話していたのだ。

 もちろん、資金援助をすべきだったと言う気はない。これはCさんの両親の浪費癖と、いつまでも闇を抱えるCさんの性格が問題なのだ。この性格では医学部に行けてもダメになったはず。だから、非はCさんにある。

 Cさんのような恨みを抱えた相続人がいる場合、変に暴発せぬよう相続発生前からその動向を注視する必要がある。資産を使い込んでいるケースが多々あるからだ。必要に応じてCさんが悪だくみをしないよう、弁護士等に相談をすべきだったとも言える。

 Aさんのような一般の人が意見を言っても、Cさんは聞く耳を持たないことが多い。このような場合は、多少の報酬を払ってでもプロの知識で徹底的に論破してもらう方が合理的だ。

 弁護士報酬をけちる人も多いが、結果として弁護士に委ねた方がプラスなことが多い。

争いを避けると、Aさん、B子さんの取り分は少ない

 では今後、どうすればいいのだろうか。

 Cさんのもくろみ通り、Cさんが自宅を相続した場合はどうなるだろう。お母さんの遺した土地の相続税路線価に基づく評価額が4000万円、建物の相続税評価額(=通常は固定資産税評価額)が1000万円、自宅以外の現金など金融資産が1000万円であったとして、残る相続財産と、相続税を試算してみた(ただし、あくまで特殊事情のない一般的な前提での計算式であり、実際の個別具体的なケースでは計算方法等が異なる場合も考えられる。下記はあくまでも、参考としての概算と捉えて頂きたい)。

【資産条件】
・土地4000万円(相続税路線価に基づく評価額で、本件では同居親族が相続する場合は特定居住用宅地の特例で8割減の評価にできるものとする)
・建物1000万円(固定資産税評価額)
・金融資産1000万円(現預金)

 ■実家を売却しないケースの相続財産は?
(Cさんが実家に住み続けた場合)
   相続財産(X)  相続税(Y)  残った相続財産(X-Y)
 Aさん  500万円
(金融資産)
 0円  500万円
(金融資産)
 Bさん  500万円
(金融資産)
 0円  500万円
(金融資産)
 Cさん  5000万円
(不動産)
 0円  5000万円
(不動産)
 ※相続税の計算方法(特定居住用宅地の特例適用)
 項目  金額
 土地  800万円(特定居住用宅地の特例で8割減)
 建物  1000万円
 金融資産  1000万円
 課税価額(X)  2800万円
 基礎控除額(Y)  4800万円(基礎控除3000万円+600万円×3人)
 課税遺産総額(X-Y)  0(マイナスなのでゼロ円)
 相続人全員の相続税額合計  0円

 Cさんに土地と建物をすべて渡し、不動産以外の財産を2人で分割し代償金はなしとすると、相続税は基礎控除の枠(相続人が3人の場合は4800万円)に収まる(表参照)。つまり、相続税はかからない。しかし、AさんとB子さんが得られる財産はそれぞれ500万円しかない。だったらCさんから代償金を……、と思ってもCさんに資金がなければそれまでだ。

 実家を売却することに抵抗があるという家族は多いだろう。

 Aさんには割り切れない思いが残るが、こうした結論に落ち着くケースは結構多い。

【関連記事はこちら】
>> 実家の相続で活用すべき「小規模宅地等の特例」を解説! 気をつけたい"3つの落とし穴"と、売却時の注意点は?

実家を売却して、遺産を均等割りした場合は、均等に配分

 では、Aさん、B子さんの兄弟が合意しない場合はどうなるのか。

 Cさんが代償金を支払える資金があれば話は別だが、それもない場合は、母の遺した自宅の売却は避けられない。Cさんがわがままを押し通し、実家に居座り続けるようなことになれば、Cさんは最悪、法的手段に訴えられる危険すらある。

 売却した場合、各相続人の取り分はどうなるのだろうか。以下が残る相続財産と、相続税を試算してみたものだ。

 ■実家を売却するケースの相続財産は?
(遺産は均等に分割)
   相続財産(X)  相続税(Y)  不動産譲渡課税(Z)  残った相続財産(X-Y-Z)
 Aさん  2000万円
(金融資産)
 40万円  約298万円  約1662万円
(金融資産)
 Bさん  2000万円
(金融資産)
 40万円  約298万円  約1662万円
(金融資産)
 Cさん  2000万円
(金融資産)
 40万円  0円  1960万円
(金融資産)
 ※相続税の計算方法(特定居住用宅地の特例適用)
 項目  金額
 土地  4000万円
 建物  1000万円
 金融資産  1000万円
 課税価額(X)  6000万円
 基礎控除額(Y)  4800万円(基礎控除3000万円+600万円×3人)
 課税遺産総額(X-Y)  1200万円
 相続税額  3人で120万円(1人40万円)
 ※Aさん、Bさんそれぞれに帰属の土地売却の税金の計算方法
(Cさんは居住していたため、特定居住用宅地の特例を使える結果、譲渡課税は0円)
 項目  金額
 売却額(A)  5000万円÷3=約1667万円
 土地の取得費(B)  4000万円×5%÷3=約67万円
(取得費不明なので譲渡価額の5%で計算する)
 建物の取得費(C)  0円(古い建物で簿価ゼロだったとする)
 諸経費(D)  一人当たり100万円と想定
 相続税のうち土地に帰属する部分(E)  40万円÷(6000万円÷3)×(5000万円÷3)=約33万円
 譲渡益(A-B-C-D-E)  約1466万円
 譲渡課税(譲渡益×税率20.315%)  約298万円

 仮に相続税評価額と同額である5000万円(土地4000万円、建物1000万円)で売却し換金価値を3等分した場合、B子さんやAさんには(5000万円+1000万円)÷3=2000万円が税引き前の資金として手に入る。一方でそれぞれ相続税が40万円ほどかかる。また、不動産を売却すると、「売却価格と、その不動産を元々取得するのに要した取得費や譲渡経費の(Cさんのように更に各種控除を考慮することもある)差額」、すなわち、不動産を売却したことによる「儲け」に対して一定の税率に基づく税金を課せられる。

 ただ、相続税のうちその売却財産に帰属する部分について取得費に含めることで儲けを少なく見る「取得費加算の特例」といった各種の規定を使えば、売却に伴う所得税等の額は高くても一人あたり300万円程度に収まるであろう。実際は、不動産を購入した時の取得費等によって所得税等の額は異なるが、このケースの場合は、Aさんたちは1600万円以上の現金を手にすることができる

 相続を契機にお母さんの住んでいた家を売却をせねばならないのは、ある意味では悲しい。ただ、Aさん、B子さんにすれば、手に入れられる金融資産額が1100万円以上も増加することになり、これは見過ごせない金額だ。

 Aさんとしては、先ほどのケースとの金額の差が大きく、またCさんのこれまでのわがままぶりを考えて、遺産の均等割りでなければ承知できないと主張することで腹を固めたのだった。

【関連記事はこちら】
>> 「家の売却にかかる税金」を、安くする方法は?自宅、賃貸、相続した空き家など、不動産ごとに異なる控除など節税方法や、税金の計算式を紹介

親族間でトラブルが起きそうなときは、弁護士などに依頼を

 それぞれの家庭の事情により、どうすべきかは変化する。

 今回のように、親族間で感情的なもつれが起き始めているケースでは、弁護士に委ねた方がプラスなことが多いのは間違いない。Aさんとしても、弁護士を通じて、今後の話し合いを進める考えだ。

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