株式レポート
2012年6月7日 マネックス証券

大幅高となった米欧株〜政策期待で株高は続くか?〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・昨晩(6月6日)の米株式市場は大幅高となり、急落した先週後半の下げをほぼ取り戻すかたちで上昇した(グラフ参照)。昨日のECB(欧州中央銀行)の理事会で金融緩和は見送られたが、ドラギ総裁が会見で翌月以降の金融緩和を示唆し、それが米欧の政策対応への期待が高まったとされている。


・もっとも、ドラギ総裁の会見で言及されたことは、市場の雰囲気を変えるほどのサプライズがあったとは言い難い。「事態の推移を注視し、行動に備える」「利下げを提案した委員が数人いた」などの総裁の発言が、翌月の利下げのシグナルとされた。ただ、政策金利引き下げは、春先以降の欧州経済指標の悪化(5月25日レポート)をうけての通常の対応だろう。

・また、ドラギ総裁は、2011年末に行われた3年物資金供給オペレーション(LTRO)の追加実施については必要との認識を示さなかった。国債金利上昇と金融システム不安が共振している中で、これへの対応としてECBのオプションは、LTROあるいは国債買取である。これらの追加政策について、ECBは、政策のメリットとデメリットを比較している段階にあるようだ。

・そう考えると、昨日の米国株の大幅高などの「リスクオン」をもたらした要因として、ECB理事会が影響したとは言い難い。それでは、昨日の大幅な株高はなぜ起きたか。一つありうるのは、ECB理事会は口実に過ぎず、先週後半以降の株安・安全資産への逃避が行き過ぎており、その反動が起きたという、シンプルな解釈である。

6月1日レポートでも紹介したが、安全資産へのパニック的な逃避で、米国10年金利1.5%以下まで低下したが、長期的にみれば「持続不可能な価格形成」の領域に入っていると思われる。経済・金融システム正常化の対応が行き詰まり、このまま米欧諸国全体が「日本化」するという事態である。

・たしかに、欧州では、資産バブル崩壊後に政策対応が機能不全にあるのはかつての日本と似ている部分も多く、このままなら日本と同じになってもおかしくない。ただ、経済安定策が機能している米国は異なるだろう。「極端な想定」に基づく異常な価格形成に対して、自律的に価格修正が起きたということである。

・もう一つの解釈は、ECBの金融緩和の効果よりも、ドイツなどによるスペイン銀行の資本増強策が水面下で動いているとの期待だろう。昨日ロイター社は「スペイン銀行救済案は最終段階」との記事で、7月から発足する欧州安定メカニズム(ESM)を通じてのスペインの銀行救済策が交渉されていることを報じた。これだけでは何とも言えないが、金融システム不安を封じ込める点で、昨日のECBの政策決定より重要だろう。

・いずれの解釈にしても、先週後半からの債券市場での異常な価格形成をもたらしたパニック的な状況は、落ち着いたかもしれない。ただ、これだけで、政策対応への不信が払拭されるとみるのはまだ早いと思われる。米国経済指標の下げ止まりに加えて、ギリシャ再選挙と政局混乱回避、ECBによる金融緩和・流動性供給の実現などが、リスク資産の本格反騰に必要だろう。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)