株式レポート
2012年6月13日 マネックス証券

デフレと人口動態の関係(2)〜相関係数がプラスの意味〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・6月5日レポート「デフレと人口動態の関係」では、2000年代以降の主要33カ国のデータから、働き手の数(生産年齢人口)とインフレ率にはほとんど関係がないことを紹介した。日本がデフレに陥っているのは、人口・働き手の数が減っているのが最大の要因とする考えは根強いが、日本と同様働き手が減ってもインフレ率がプラスを維持している国があるなど、両者に明確な関係はない。

・これをあらわすために、グラフのような働き手とインフレ率の関係のデータをお示しした。実際に、両者の相関係数は0.105と極めて低い。働き手の数が増える国はインフレ率が高く、逆に働き手の数が増えない国のインフレ率が低い(デフレになる)、という関係は、ほとんどないということである。


・このレポートに対して、以下のようなフィードバックを頂戴した。「グラフから、人口とインフレ率に正の相関関係があることが確認できました」。レポートでは「両者に関係がない」と説明したが、筆者の考えは伝わらなかったようだ。どうやら、グラフで表示した相関係数が「プラス」で、両者の関係表す近似線が右肩上がりなため、ある程度両者に関係があるように感じられるのかもしれない。

・ただ、相関係数が0.105は、統計的に「相関がない」ということである。数字の感覚に慣れていない方に、ご理解いただくために、先に示した33カ国の調査対象国を、32カ国に減らし両者のグラフを同じように作成した(グラフ参照)。具体的には、対象国の中でインフレ率が6.2%(2000年代)と高いアイスランドを除いた。そうすると、相関係数はマイナス(-0.0023)、両者の近似線はほぼ水平になる。


・調査対象国を一つ減らすだけで、相関関係がプラスからマイナスになる。もちろん、これは、両者の関係が「負の相関」であることを意味するわけではない。要するにこの程度の「脆い関係」であって、だから「両者に相関関係がない」ということである。

・2つの事象の関係をみるために相関係数は便利な数字だが、プラス・マイナスの符号は意味がなく、数字が1に近くないと相関性があるとは言えない。また、相関係数が0.7前後あり、一定の関係が存在するように見えることもあるが、サンプル数が十分でないため「偶然」高く算出される場合もある。相関係数が「都合よく」使われることが多いことにも注意したい。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)