FP花輪陽子のシンガポール移住日記
【第47回】 2019年7月3日 花輪陽子

シンガポール在住の外国人はどのような”お金のライフ
プラン”を立てている? リスクへの備え方の違いや
米国人や欧州人が好む金融商品の傾向をFPが解説!

外国人の「ライフプラン」の考え方は日本人と大違い⁉
相談者は自分で「バランスシート」を作るのも当たり前

 シンガポール在住のファイナンシャル・プランナー、花輪陽子です。

 最近、シンガポールに住んでいるさまざまな国籍の方から、「ライフプラン」の相談を受ける機会が増えました。

 ライフプランとは、直訳すると「人生設計」ですが、ファイナンシャル・プランナーが担うのは、その中でもお金の部分。たとえば、理想的な人生を送るためにはどれくらいお金が必要で、そのお金をどうやって準備すればいいのか、などのアドバイスを行います。

 これまでに米国や欧州、中華系の人などから相談を受け、実際にアドバイスもしてきましたが、そのときに感じたのは「彼らの考え方は、日本人と根本的に違っている」ということでした。

 日本人の場合、ファイナンシャル・プランナーに相談する段階で、自分たちの資産の全体像を正確に把握できていて、将来どうしたいか、といったプランが明確な人はとても少ない印象です。

 たとえば、夫婦がお互いの貯蓄について把握していなかったり、加入している貯蓄型の保険の解約返戻金が、どれくらい戻るかわかっていなかったり……。将来についても、「老後も今の場所に住んでいるかはわからない。田舎に帰るかも」「夫婦で老人ホームに入居したい」など、漠然と考えている人はよくいますが、具体的な資金計画までは立てていない場合が大半です。

 それとは対照的に、私がアドバイスした外国人たちの大部分は、自分で「バランスシート」(資産と負債がどれくらいあるかを示すもの)を作成し、預金や株、債券、投資信託、不動産などの資産価値を時価で把握していました。

 また、「老後はこの国に住みたい」「医療サービスを受けるならこの国がいい」「金融サービスはこの国のものを利用したい」といったように、将来の計画をグローバルな視野で、具体的に考えている人も非常に多かったのです。

 彼らは、一様に「せっかく専門家に相談するのだから、ちゃんとした情報を出さないと正確なアドバイスがもらえず、もったいない」と考えているようです。日本人の相談者とライフプランに関して話すときには、「今後が不安で……どうしたらいいでしょうか?」などと、質問が漠然としていることがよくありました。これに対し、外国人たちは「外債を何本か買って、6~7%くらいの利回りを出すようにしたいが、どんなものを組み合わせればいいか」といった具合に、質問の内容も明確でした。

 もちろん、漠然とした不安があるだけで、何をどうしたらいいかわからない人、金融リテラシーにまったく自信がない人も、どんどんファイナンシャル・プランナーに相談していいのです。ただ、資産の全体像を明らかにすること、なるべく具体的な質問や要望を伝えることを意識したほうが、より的確なアドバイスを受けられるということは、頭の片隅に置いておくといいかもしれません。

国や勤務先に依存せず、リスクを常に視野に入れる
資産は最低でも2~3種類の通貨建てに分散する!

 そのほかに、外国人と日本人で大きく違うと感じたのが、「リスク意識」の高さです。日本では、いま年金不安が高まっていますが、そのわりに、まだまだ社会保障などへの依存心は強く、「国の危機に備えて、自分で資金準備をしておこう」という考えが希薄な人が目立ちます。

 また、「老後は退職金で何とか……」と考えている人もいるかもしれませんが、基本的に退職金の額面は固定されているわけではないので、勤務先の経営状況が悪化するリスクも考えて、自己防衛をしなければなりません。しかし、そこまで考えが及んでいない人も多いのです。

 これに対し、シンガポールで出会った外国人たちは「万一に備えて、いくつもの逃げ道を準備しておきたい」というのが、共通の見解です。その一環として、彼らは資産を複数の通貨で保有しています。日本だと、円建ての資産しか保有していない人が圧倒的多数ですが、シンガポールに住む外国人は、預金や金融商品を自分の母国の通貨とシンガポールドル、それに米ドルなどのメジャー通貨で保有している場合が多いのです。

 リスクヘッジとして複数の国の社会保険制度に加入し、それぞれの国から保障を受け取れるようにプランニングしている人も珍しくありません。このような体制にしておけば、どこかの国の通貨が暴落したり、社会保障の仕組みにほころびが生じたりしても、立ち直れないほどの大ダメージを受けるリスクを軽減できるからです。

 こうしたリスク意識の高さなどからわかるように、彼らは金融リテラシーがそれなりに高い人たちです。もっとも、すべての外国人がそうだというわけではなく、私が出会ったシンガポールに在住する、それなりに収入も資産も多い外国人がそうだった、という話なのですが、彼らのリスク意識の高さは、私たち日本人も見習うべきかもしれません。

米国人は株や投資信託を買っている人が多い
欧州の主要国では確定拠出年金や保険での運用が主流

 ここからは、シンガポール在住の外国人たちが、どのような資産を保有しているのか紹介しましょう。

 シンガポールに住んでいるという共通点はあっても、保有する資産の内訳は、国籍によって異なる傾向が見られます。私が出会った人のうち、米国人は株や投資信託に投資している人が多く、英国やフランス、ドイツなどの欧州の人は、保険や確定拠出年金などで老後に備えている人が多い印象でした。

 欧州の主要国の確定拠出年金は、日本の確定拠出年金と同様に、投資信託などを選択して自分で運用する仕組みです。前述のように、株や投資信託を買っている割合は、欧州の人より米国の人のほうが高いのですが、欧州の人は確定拠出年金を通じて投資信託を買っているようです。要するに、米国人も欧州人も、何らかの形でリスク資産を保有している割合が高く、この点が日本人と大きく異なると言えます。

 また、欧州でもシンガポールでも、香港でも、保険は貯蓄型のものが人気で、老後資金を作るためのツールとして、よく売れています。対照的に、日本では「保険はあくまで必要な保障を得るためのもので、保険料の安い“掛け捨て”型がベスト」という考え方が主流です。

 私が日本の掛け捨て型保険の話をすると、多くの外国人は「掛け捨てなんて、もったいない!」と、拒否反応を示します。ちなみに、彼らは賃貸の住宅に住むことも「もったいない」といいます。どうせお金を払うなら、住宅を購入して自分の資産にしたうえで、ローンを返済したほうがいい、という発想なのでしょう。

 私自身、日本にいたときは、掛け捨て型の保険がベストだと考えていました。しかし、今は必ずしもそうではないと感じています。貯蓄型で、しかも元本保証であれば、保障は確保した上で、払い込んだ保険料も回収できます。必要な保障を得られて、元本を上回る保険金が戻ってくるわけですから、損することはないのです。

 ただし、保険料は掛け捨て型よりも格段に高くなりますし、所定のタイミングよりも早く解約すると、通常は元本割れしてしまいます。その元本割れするか、しないかの損益分岐点に至るまでの期間が非常に長い点はネック。資金が長期間にわたって固定されてしまうわりに、利回りはあまりよくないので、資産運用をするなら保険以外の金融商品を検討したほうが、よっぽど資金効率が良いと見なされています。

 しかし、価値観は人それぞれです。たとえ資金効率はよくても、保険料を捨てることに抵抗感を覚えるなら、貯蓄型の保険を検討するのも悪いことではありません。以前の私なら、掛け捨てを渋る相手を説得しようと試みたかもしれませんが、資金的に余裕がある人であれば、あえて掛け捨てを選ばない選択もアリだ、と海外でライフプランの相談を受けることが増えるにつれて、考えるようになりました。

 さて、今回は外国人のライフプランの立て方について紹介しました。私が出会ったのは、海外経験が長く、資産形成の面でもエリートの人が多いのかもしれませんが、彼らに共通しているのは、地に足がついた人生設計をしていることです。日本で資産運用をする場合、シンガポールなどの海外とは環境が大きく異なりますが、たとえばリスク管理の考え方など、マネできるところは取り入れてみるといいかもしれません。