株式レポート
2012年7月2日 マネックス証券

株高が続くには〜サプライズ後のマーケット〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・先週末(6月29日)の欧米市場では株式・商品相場などが急騰した。6月29日レポートでご紹介した、同日の東京時間に明らかになった、ESM(欧州安定メカニズム)による銀行への資本注入・国債買い取り策などの合意というサプライズが欧米市場にも及び、市場は一挙にリスクオンに傾いた。

・各種報道によれば、自国の財政負担を警戒していたドイツのメルケル首相を、域内の経済安定を重視するイタリアのモンティ首相などが説得し、市場安定化政策合意に至った模様である。欧州における「国債価格下落⇔銀行資本不足」の悪循環は、政策対応でしか止められないが、障害となっていたドイツが譲歩をみせたことは大きな変化だ。ユーロ体制を維持しかつ経済を安定化させるには、欧州域内の財政資金を融通・シェアする仕組みが必要だが、欧州の政治がこうした方向に向かう一歩を踏み出したのかもしれない。

・今回、ESMによる市場安定化策にドイツが合意したことは重要な変化である。ただ、合意された政策メニューが機能するには、まだ不透明な面が残っている。(1)ドイツのESM参加が実現するか(ESMが稼動する日はまだ決まっていない)、(2)ESMの国債買取金額の規模がどの程度か、などの点である。

・先週末のサプライズは幅広く好感されたが、各市場は欧州問題の状況をどう判断しているのか。欧州債務問題への思惑で動いていたスペイン10年国債金利(対ドイツ国債利回り格差)は、先週末大きく低下し、6月22日以来の水準まで下がった。依然、5月初旬に債務問題が再燃した直後と比べ、約50bp(0.5%)高い水準にある(グラフ参照)。


・一方、米国ダウ平均株価水準をみると、先週末の大幅高で、5月初旬の「ギリシャショック」直後(5月8日)以来の水準まで上昇している(グラフ参照)。欧州問題が収束し、今後事態が正常化するシナリオに対する期待は、米国株市場でより強まっているといえる。


・ただ、米国株が持続的に上昇するには、6月29日レポートで紹介したが、米国を中心とした「世界経済下振れへの警戒」が払拭される必要があると考えている。今週発表される、6月分のISM景況指数、雇用統計などの大幅改善が条件になる(その可能性は高くない)。それに加えて、先週末合意された市場安定化策が機能し、高止まっているスペインなどの国債金利の一段の低下が必要だろう。それらを確認しながら、株式市場などリスク資産への投資に踏み切っても遅くないと考えている。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)