株式レポート
2012年7月24日 マネックス証券

ユーロ安が続く構図〜円全面高のリスク〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・ユーロ安が続いている。昨日(7月23日)の欧米市場では、ユーロドルは1.21の水準を一時下回り1.20にじりじり接近している。対円でも1ユーロ=94円台と2000年以来の安値を下回ってきた(グラフ参照)。


7月13日レポートなどで度々紹介したが、ユーロ安が止まらない一つの理由は、ECB(欧州中央銀行)による金融緩和が続くとの思惑が強まっていることである。今月ECBが利下げに踏み切った直後に、更なる金融緩和を示すECBの高官による発言が続いている。

先週末(7月21日)にもECBのドラギ総裁は、「来年初めにはインフレ率が2%に迫るか2%を下回ると予想、年内にも実現する可能性が高い」、「われわれは一切の予断を持たずタブーはない」とメディアで言及した。インフレ率が低下してデフレリスクが高まれば、更なる金融緩和を続けるというメッセージである。

・今後さらにECBが政策金利を引き下げれば、短期金融市場での調達金利はほぼゼロまで下がる。そして、ECBに対して市中銀行が預ける預金準備に対しては「マイナス金利」となる可能性もでてくる。仮にマイナス金利となれば、米FRBや日銀よりも金利低下が進むことになり、この思惑から為替市場でのユーロ安期待は高まるだろう。

・更に、スペイン国債金利が再び7%を超える水準まで上昇、安全資産であるドイツ国債との利回り格差が再び拡大している(グラフ参照)。6月中旬のギリシャ総選挙、同月末のEU首脳会議を経て、安全網構築への期待で金利上昇に一旦歯止めがかかった。ただ、スペインの銀行救済策の実効性、ギリシャの債務削減交渉への不透明感が高まっている。


・これには、世界的な景気減速で財政赤字拡大が止まらないため、欧州の政策対応が不十分になるとの疑念が強まっている面もあるだろう。6月18日レポートなどで指摘したが、スペインなどの重債務国の国債金利低下をもたらす、より大胆な政策対応が必要かもしれない。

・ユーロ安が止まらない中で、昨日(7月23日)にはドル円も一時77円台まで円高となり、6月初旬以来の水準まで円高ドル安が進んでいる。世界の中央銀行が一斉に金融緩和に向かう中で、最も積極的に金融緩和ができる日銀が対応を見送った結果、7月13日レポートで懸念したとおりに円高圧力が再び強まっている。

・米2年金利とドル円を比較すると、米2年金利は2012年初の水準まで低下している。単純に両者の比較でみるとドル円でも円高が進み、円全面高となってもおかしくない(グラフ参照)。2011年までと同様、ドル円で円高が進み、日銀の金融緩和と為替介入が対症療法として繰り出されるフェーズに入りつつあるのかもしれない。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)