株式レポート
2012年8月10日 マネックス証券

世界経済回復に時間を要するリスク - 村上尚己「エコノミックレポート」

昨日(8月9日)のレポートでは、米国の雇用統計改善で市場のムードが好転しているが、実際に春先からの世界経済減速の歯止めがかかっているのか、について考えた。米国の国内需要は2011年などと同様底堅いとしても、欧州経済が後退局面にある中で、米国の持ち直しだけで世界経済全体がなかなか回復に転じないリスクが残っている。

・このリスクの判断材料として、銅・アルミニウム、鉄鉱石などの、経済活動の需給動向を反映する産業用金属価格を紹介した(グラフ参照)。足元で原油価格が戻している反面、銅などの価格はほとんど上昇しておらず、世界経済の停滞が続いていることを示している。


・同様に、足元の世界経済の動きを把握するのに役立つのが、モノの荷動きを示す輸出入動向である。既に7月分について、韓国と台湾の輸出実績が判明している。主要先進国に対するハイテク製品の供給国である両国からの輸出は、2012年の春先から減少しているが、7月には一段と落ち込んだ(グラフ参照)。


・台湾からの輸出を地域別にみると、景気後退に入っている欧州向けだけではなく、米国や他のアジア向けの輸出も同様に停滞している。こうした動きを素直にみると、米国の国内需要の底堅さが、世界経済の減速に歯止めをかけつつあるようにはみえない。

・また、昨日(8月9日)、7月分の中国の主要な経済指標が発表されたが、4月に大きく減速した鉱工業生産が、若干とはいえ更に伸びが鈍化していることが判明した。中国企業の生産活動減速には、中国の輸出も、台湾・韓国同様に停滞から脱していないことが影響しているとみられる。

・これらのアジア主要国の経済指標は、世界経済の停滞が長引く可能性が高いことを示している。2013年前半までのスパンで考えれば、世界経済は緩やかに回復に向かうと予想しているが、当面は、世界経済の脆弱さに市場が再び疑念を頂くシナリオを念頭に置きたい。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)