《ビジネスアングル》北里研究所/北里大学/Educational Corporation/University 最新鋭の医療空間に息づく医療者の情熱とホスピタリティ

最新鋭の設備導入と患者への配慮が両輪

 新病院への具体的な期待として挙げられるのが、高度な先進医療の提供だ。手術室数は合計26室で、年間の手術数も増えると予想される中、大きな期待を寄せられるのが、昨年県内大学施設で初稼働の手術支援ロボット「ダヴィンチ」。その背景を手術センター長の平田光博が語る。

「手術の難易度はさまざま。いわゆるゴッドハンド、神の手と称される特別な技能を持つ医師が必要な手術もあれば、さほど難しくないものもあります。ダヴィンチのメリットは、トレーニングを積めば、常に高レベルで均質な手術が再現できる点。例えば、前立腺がんの内視鏡治療に応用すると、腹腔鏡手術に比べて繊細な手術が可能になります。より低侵襲な外科治療が、多くの診療科で実現することを期待しています」

 もう一つの目玉は「ハイブリッド手術室」。今までは手術中にCT撮影、血管造影をする場合、いったん中止して場所を移動していたが、新病院では手術室とCT室、血管撮影室が一体化している。

「患部を切開する手術とカテーテルによる治療を同じ場所で行うことや、予め撮影した画像上の病変部を実際の手術部位に投影させて、精度の高い手術を行うことが可能になります。また、切開の必要性がなくなることはないので、最新機器を使う一方で、従来の外科手術の技術を学生にしっかり学ばせる。それも大学病院として忘れてはいけない役割です」(平田)

高度先進医療を提供する最新医療設備を導入

平田光博
北里大学病院総合手術センター長/医師としての専門領域は血管外科
新病院の手術室で行われた、手術支援ロボット「ダヴィンチ」の運用テストの模様(写真上)。ダヴィンチでの手術は、医師が「サージョンコンソール」(同左上)と呼ばれる機械に座り、遠隔操作で3本のアームを備えた「ペイシェントカート」(同左)を動かして行う

「丁寧な介入」により共に創る医療を進化

 ダヴィンチやハイブリッド手術室が高度先進医療を象徴するものだとすれば、新設された「トータルサポートセンター(以下TSC)」は、患者中心、共に創り出すという、北里の医療理念を、端的に示す存在といえる。

 高齢化の進展によって、2030年には、相模原市の死亡者数は現在の倍になると予想されている。高齢者の各種疾患による入院患者も増え、救急患者の受け入れが困難になるとも指摘されている。同センター長を務める小野沢滋は長年、在宅医療と退院支援に携わってきた。その経験から導かれた「丁寧な介入」がTSCのキーワードだ。

「三次救急病院として機能させるには、在院日数の短縮が必要です。家に帰りたいという意志が患者にあるなら、可能な限り実現してあげる。そして、地域の病院や介護事業者と連携した在宅医療、介護でケアする仕組みをつくらなければいけない。そのために必要なのが入院前からのフォロー。TSCでは、入院が決まった時点で看護師やソーシャルワーカーが本人、家族の話を聞き、退院以降に支援が必要だと考えられる場合は、入院前から、退院後にスムーズに自宅療養へ移行できるようなサポートを開始します」

入院前から退院後までを総合的に支援する「トータルサポートセンター」

トータルサポートセンターでは、16人の看護師と14人のソーシャルワーカーを中心に、入院前の時点で退院後の生活までを見据えたアドバイスや情報提供を行う
小野沢 滋
北里大学病院トータルサポートセンターセンター長/長期にわたり在宅医療を専門に取り組んできた

 入院前の患者は不安に包まれているが、退院後の生活が予想できれば不安も軽減する。それが在院日数の短縮につながり、結果的に地域医療体制の保持にもつながっていくのだ。

 TSCを最大限機能させるには、看護師やソーシャルワーカーなどの質が鍵になる。入院する高齢者には退院後の話を聞く。それは生き方、場合によっては人生の終え方を聞くことでもある。丁寧に介入し、心を開き、本音で話してもらうには、高度な“引き出す力”が必要になる。

「北里はソーシャルワーカー育成の老舗であり、スタッフの質は驚くほど高い。チーム医療の伝統があり、医師、看護師、ソーシャルワーカーの連携も非常にスムーズです。長年の在宅医療、退院支援を通じて見えてきた理想を、必ずここで実現させたいと思っています」(小野沢)

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