2012年2月4日号第一特集以来、電機班が総力を挙げてソニーを取材。2年前の特集はハワード・ストリンガー前社長兼CEOの退任発表直前に発売され、「ハワードの首を取った」と言われるほど厳しく問題点を指摘した。そして今回、同じ電機班が徹底取材し、平井一夫社長兼CEO体制を総点検。詳しくは本誌をご覧いただきたいが、ここでは「なぜソニーを書き続けるのか」という、本誌では書けない電機取材班の「想い」をお届けする。
取材班はソニーや電機業界関係者に取材していると、冗談半分に、たまにこんな風に聞かれる。
「なぜ、いつもソニーに対して厳しい見方をするのか。ソニーがそんなに嫌いか?」
信じてもらえないかもしれないが、決してそうではない。むしろ取材班はソニーファンだ。
取材班の中心的存在である後藤直義は「ソニー製品は好きです。信じてもらえないと思うけど」と話す。
後藤は大学時代、オーケストラ部でコントラバスを弾いていたという意外な一面を持つ。しかし、卒業が近づいたころ、そのコントラバスを売り払った。卒業制作でドキュメンタリーをつくるために、ソニーのハンディカム、バイオ、サイバーショットを買いたかったからだった。
「バイオを買ったのは、映像編集ソフトが搭載されていたから。サイバーショットとハンディカムで撮影して、家に帰ってバイオで編集していました。だから、特にバイオに対しては思い入れは人よりも強いと思う」と話す。
同様に藤田章夫もソニー製品のファンだ。藤田が小学校5年生のとき、友達がウォークマンを塾に持ってきたのを見て、うらやましいと思ったのがソニー製品に憧れを持ったきっかけだったという。「ソニーは別格だった。理由はよくわからないけど、なんか好きだった」。
取材班で一番若手の鈴木崇久もソニー製品は好きだと言う。「カメラは仕事にどうしても必要だと妻に半分ウソをついてNEX-5を買った」と明かす。
そんな取材班の面々は、ソニーやソニー関係者、ソニーOBへの取材を通して何を感じたのか。後藤は「ヒト・モノ・カネのうち、商品や特許、工場などのモノはあるし、不動産や保有株式の売却でカネもある。問題はヒトなんだと思う」と話す。
とりわけ経営陣については、ハワード・ストリンガー前社長がすがった外人部隊も結果を残せず、各業界で知名度の高い社外取締役も、現状を改善する方法を提示できてはいない。
上と左の画像は、2年前の特集に掲載した経営陣の顔ぶれの図を、現在の状況に合わせて改訂したものだ。現状を改善できなかったのにもかかわらず、前体制の経営陣が多く残っていることが一目瞭然だ。結果を出せていないのに、なぜまだ居座っているのかという素朴な疑問が浮かぶが、それだけ人材難だということも言えるだろう。本誌では今回、最新情報を盛り込んだ現経営陣の顔ぶれを図にしている。
ただ、取材班は「今回は希望も見えてきている」と話す。それが吉田&十時という、この4月から経営中枢に抜擢された役員だ。「この2人は今のソニーを変えられるかもしれない」(藤田)と期待を口にする。
だが、簡単ではないだろう。なぜなら、ビジネスの先行きがまったく読めていない現状があるからだ。本誌のプロローグでは、3ヵ月毎に業績修正を繰り返している様子を図版化しており、ソニーの混乱ぶりが一目で分かる。
ソニーは言わずと知れた、ニューヨーク証券取引所に最初に上場した日本企業であり、戦後、最初に日本国旗をニューヨークの街にはためかせた企業でもある。「SONY」といえば、世界中で知らない人はいない、日本初の国際的なブランドだ。
特集制作の前に、取材班は『ソニー自叙伝』や『MADE IN JAPAN』をもう一度読み返した。そのなかで、ソニーが世界中の人をあっと言わせる商品を世に送り出してきた、輝かしい歴史のある企業だということを再確認した。その事実を知れば知るほど、当時とはかけ離れた今のソニーの低迷の原因は、どこにあるのかを探りたいという想いを強くする。
そこに冒頭で書いたような、取材班おのおののソニーに対する想いが加わり、さらに取材に力が入るのだ。
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【単独インタビュー 平井一夫 社長兼CEO】
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