東急東横線・目黒線、横浜市営地下鉄グリーンライン「日吉」駅から徒歩5分の好立地にある慶應義塾普通部

事前予約制で、参加希望者が多い場合は抽選となる慶應義塾普通部の学校説明会。9月12日に3回、13日に5回、各回定員300人で実施された。親子での参加が中心で、父親の姿も目立った。体育館での全体説明は約30分、その後校内を約40分間見学した。(ダイヤモンド社教育情報)

慶應義塾の源流、普通部

 全体説明では、普通部長(校長に相当)の荒川昭先生により、学校案内に沿う形で沿革と教育内容が紹介された。

 創立者である福澤諭吉先生の『学問のすゝめ』から「専ら勤べきは人間(じんかん)普通日用に近き実学」を挙げ、この「普通(=普遍性)」が校名の由来であること、学校の沿革として、1890(明治23)年に大学部が設置されたのを契機に、従来の課程が普通部となったこと。つまり、一般的な大学の付属校とは異なり、慶應義塾の源流が普通部である点が強調されていた。また、教えとしては、独立自尊の精神を説き、人と人との交流、人間交際の重要性に触れている。 

 「我日本国中に於ける気品の泉源、智徳の模範たらんことを期し
 以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり」(慶應義塾の目的より)

 教育の目的としては、気品と社会の先導者、という点が強調され、中学段階で身に付けるものとして、自ら学び自ら考えること、日々こつこつと学びを続けること、しっかり観察し自ら判断・行動すること、自己表現することなどが挙げられた。

 普通部は、普通の(あまねく通ずる)教育と代表的な行事の労作展(自ら学ぶ普通部の具現化)と目路はるか教室(先輩と後輩の人間交際)とを通して自分を磨くことができる学校である。

 学力の土台づくりをするため、すべての科目を隔てなく、基礎・基本を重視して、自己表現力を育てる。作文やレポートなど書かせることに加えて、生徒が話す機会を多く設けており、例として、プレゼンテーションやスピーチ、授業時の発表などが挙げられた。

 今年で92回目となる1927(昭和2)年に始まった伝統行事である「労作展」は「普通部教育の神髄」とまで評される重要な行事である。在学中に、1年間をかけて作品制作や論文製作を行う機会が3回ある。テーマ設定は各人の自由で、自ら進んで取り組むことが求められる。

 校内には、芸術系を中心に受賞作の展示スペースが設けられている。受賞者には年次で異なるデザインのメダルが授与されるが、3種類すべて集めるのは困難とのこと。元は手工科から始まったが、現在は各教科で、生徒が取り組みたいことを自由にできる体制が整い、論文も含めて多彩な取り組みがされている。2020年は一般公開が中止となった。

 「目路はるか」とは校歌の一節に出てくる言葉だが、普通部百年を機に始まった「目路はるか教室」では、学年ごとの全体講話で先輩の話を聞く以外にも、各学年で先輩を呼んで20~30人に分かれて好きなコースを選ぶ10のコース別授業も行われている。