教室は廊下側もガラス窓で、全体的に明るい校内

昨年9月26日、午前と午後で各220人が参加、2時間を費やして実施された学校説明会。希望者には校内見学と個別相談も行われた。時間も内容も例年通りの趣向で、ここまでしっかりと行った学校は2020年には珍しいと思われる。「学校案内」パンフレットや「生徒募集要項」以外にも、「令和2年度入試 正答率・問題解説」「各教科の出題傾向と対策」「兄貴たちが教える高輪の学校生活」「理科・社会科から探る高輪生の育て方」などが配布され、「令和2年度入試問題(実物)」を500円で、「スーパー過去問(3年分)」(声の教育社)を2000円で販売していた。(ダイヤモンド社教育情報)

新駅効果で弾みがついた高輪

 2020年3月は、高輪にとって記録に残る出来事が重なった。まず、唐突な休校要請から始まった新型コロナ対策である。実際には2月末から5月末までの3カ月間、休校することになった。高校生向けにはClassiを、中学生向けにはGoogle Classroomを用いる一方で、YouTubeを使った動画配信授業も実施した。

 次に3月14日の「高輪ゲートウェイ」駅の開業である。それまでの最寄り駅「泉岳寺」「白金高輪」に加えて、JR山手線・京浜東北線の新駅ができたことで、飛躍的にアクセスが向上した。実際、在校生の3割弱がすでにこの駅を利用しているという。

 そして、すぐ近所にある旧高松宮邸に上皇ご夫妻が仮住まいを始めたことで、そこが仙洞仮御所になった。学校に直接影響があるわけではないが、そういう街にこの学校はあるということだ。

 学校は赤穂四十七士の墓所がある泉岳寺に隣接している。一見すると、この曹洞宗の寺院の付属校のようだが、実際は浄土真宗の西本願寺によって明治18(1885)年に京都で創立された。2020年で135周年を迎える伝統校だ。20世紀に入ってすぐに東京に移転、宗門から独立した。平成に入ってからは休校していた中学校を復活させ、制服も一新し、2014年からは中高完全一貫校になっている。

「自主堅正」「他山之石」という古風な額が飾られた講堂で、まずは平野豊校長の挨拶の後、「高輪の教育について」の話から始まった。

 教育理念は、1989年の中学校再開の際に据えた「見えるものの奥にある 見えないものを見つめよう」。それは本質の探究である。例えば、理科では実験や観察を多く行うようにしている。国語では作文という科目を導入している。これは新しい学習指導要領の国語表現に該当するものだ。書かせることで、表現力や想像力を育んでいく。

 自分の役割を理解して活躍する社会人として自立した人材を送り出すため、まずは中学生の段階で生活習慣の確立から始める。男子だけの集団では、最初のうちはちょっかいを出す、出されたというようなトラブルもあるが、これは中3になるとピタッとなくなるのだという。

 印象的だったのが、「学校らしい学校でありたい」という校長の締めの言葉だった。授業・部活動・体験学習を通して、バランスの取れた人間を育成するというのは王道である。校舎も含めて、校内の雰囲気がお父さん世代にとっては懐かしい感覚に浸れる。