頑固一徹の「肥後もっこす」と
見解の相違で対立

 細谷さんの近くに接しておられて、どのような影響を受けましたか。

 後で聞いた話ですが、白羽の矢を立てられ、牛尾治朗さん(経済同友会代表幹事などを歴任)に説得されたが、りそなの経営者になることを相当悩んだそうです。新たに2兆円の公的資金が必要な銀行で、自分の経験値が通用するのか、わからないわけですよね。周囲の反対もあったようです。

 チームを引き連れて銀行に乗り込んでくると思いましたが、連れてきたのは秘書一人だけ。大変な覚悟だったと思います。細谷は肥後もっこすで、頑固一徹なんです。

 これが正しいと思ったら突き進んでいくし、絶対に変更しない。私もよくぶつかりました。財務部長という立場で目の前の状況を見ていましたが、細谷はどうすべきか、中長期的にどう変えていくかという視点で考えていました。純粋な方でしたので、みんなついていったのだと思います。

 どのような問題でぶつかったのですか。

 営業時間を午後3時から5時まで延長するテーマに取り組み始めた時、事務処理の関係で、当初は、午後3時に一度店を閉めていました。だが、「継続的に営業しないで、何でシャッターを閉めるのか」と激怒しましてね。

 店頭での待ち時間ゼロ運動をやると言うのですが、そんなことできるわけないと思い、「やれないことを支店長に宣言させると、彼らが追い詰められてしまいます」と食い下がったら、逆鱗に触れました。「高い目標を掲げて取り組まないと、大きく舵を切れない」というのです。

 たとえばコストダウンに取り組む場合、5%、10%の削減ならできるけど、一気に半分にすることは難しいかもしれません。しかし、高い目標だからこそ、真剣に考え、組織が大きく揺れる。実務的にどうこうするというのは、目標を掲げる際には関係ない話で、高い目標を掲げることが重要だと、後になってわかりました。

「事務処理上、無理です」と従業員が言っているので、お待たせ時間5分以内という目標で我慢するか、となってしまうのではなくて、トップが覚悟を示し、うまくいかなかった時、トップみずから恥をかく覚悟が大事になってきます。

 りそな再生プロジェクトチームを発足させて、改革を進めました。

 変化を恐れる人間が多いことも事実ですが、みんながみんな抵抗勢力だというわけではありません。改革が必要だと危機感を持つ社員、秘かにプランを温めていた社員が声を出し始めました。700人の社員が自主的に参加して、2003年9月、経営トップに218項目の提言を行いましたが、これも細谷改革を推進する大きな力になりました。

 2年間でV字回復しましたね。

 処理すべきものはすべて処理せよと発破がかかり、2003年3月期、すでに8376億円の当期損失を出しましたが、2003年9月中間期に1兆7696億円という巨額の赤字を計上しました。決算発表直前は、寝ることができませんでした。

 短時間で損失処理を終わらせるスピードが大事だと、細谷は考えていました。最初の100日間でバランスシート改革を実行すると宣言し、「厳格に、嘘をつかない、先送りしない」を再生の基本方針に掲げました。

 トップが本気を見せたから、社員は一致団結し、同じ方向を向けたと思います。最初の100日が組織の1000日後を決めると、細谷は語っており、このスピード感と透明性は、いまの経営にも活かしています。