ベンチャー企業は、「成長に伴う痛み(グロース・ペイン)」といわれる、さまざまな課題に直面します。成長を志向しながら、なおかつ進取の精神を維持していくために、どのようなことを実践されていますか。
 創業と同時に、ソラコムのビジョンとミッションを作成するとともに、これを実現していくにはどのようなリーダーシップが必要なのかを膝詰めで話し合った結果、「リーダーシップ・ステートメント」にまとめました(図表2「ソラコムの企業文化」を参照)。最初は14項目、現在は1つ増えて15項目あります。また、3カ月に一度は見直して、ブラッシュアップを図っています。

 それから、外部の方がびっくりされるのが「階層がない」ことですね。現在の企業規模や成熟度だからできるのかもしれませんが、いわゆる管理職はいなくて、完全にフラットであり、それに基づいた組織にしています。そもそも経験者ばかりが集まっているので、あれこれ指示する必要がないのです。
 また、お互いのことはニックネームで呼ぶようにしています。対等かつ自由に意見を出し合い、忌憚のない議論をするためです。社長とか部長とか肩書きがあると、ついつい忖度してしまいますから(笑)。私たちの事業領域はまだ新しく、技術も市場も進化していますから、誰も正解などわかりません。
 スタートアップは、言わば〝漂流船〟だと思うんです。食料は限られており、人が増えたら、すぐに底を突いてしまう。生き延びるには、いまいるメンバーで何とか宝の島にたどり着くしかない。こうしたギリギリの状況の中で、たとえば一番の若手が海水から水をつくる方法を知っているのに、遠慮したり忖度したりして黙っていたら、全滅してしまいますよね。生き延びるには、誰もが自由に意見が言えるフラットな環境であること。忖度せずにみずからの意見を出し、ビジネスの観点から公平に判断する必要があるのです。