これまで主力のFA事業についてお聞きしてきましたが、4つの注力ドメインの一つであるヘルスケア事業についてもお聞きします。人間を見続けてきたオムロンとしては、ヘルスケア事業を持っていることは大きな戦略的利点ではないかと。どう位置付けていますか。

 もともとは、「センシング&コントロール」という技術を人にも役立てることができるのではないか、人間が幸せに生きるには健康が第一であり、事業としてもやる価値がある、と考えた創業者が1970年代にスタートさせました。苦労の歴史はありますが、いまでは1000億円を超え、柱の事業に育ってきました。世界シェア50%の家庭用血圧計や体温計、喘息の治療器などをグローバルに展開しています。
  「人と機械の融和」がテーマとなったいま、機械のセンシング&コントロールと、それをオペレーションする人間のセンシング&コントロール(動作、体調、気分などのバイタルサインをセンシングする技術)が、工場ラインの品質や加工にも重要になってきています。FA事業だけでなく、ヘルスケア事業を持っているオムロンのユニークさは、お客様にとって価値ある存在になると考えています。

 

 グローバル化の際にも、ヘルスケアは「上陸パッケージ」として役に立っているとか。

 オムロンは、FAなどのB2B事業が主だったため、残念ながら新興国ではブランド認知度がほとんどありませんでした。しかし、中国、インド、南米諸国などでは、B2C事業のヘルスケアを通じて、オムロンブランドに接してもらう機会が多くなってきました。その結果、ハイテックでハイタッチなブランドイメージを持っていただくことができます。これは、その後に展開をしていく電子部品やFAなどの事業にとっても、大きなプラスになっています。

変化を「創造」する存在で
あるために

 山田さんのこの7年の手応えですが、『統合レポート2017』には「自走的成長構造の確立は道半ば」と書かれています。ですが、ある程度の自信も持っていらっしゃるように感じます。また、ポスト「VG2020」となる2030年へ向けて、どのように進化させたいと考えていますか。

 そうですね、やはり道半ばというのが正直な気持ちです。手応えも感じている一方で、この会社ならもっとできるという思いがあります。そろそろ、次の10年ビジョンもスタートさせなければなりません。この時に、創業者が考案した「SINIC理論(注4)」はまさに〝コンパス〟となります。2030年には、それまでの「最適化社会」から「自律社会」へ向かうと予測されていますが、その中で我々は、あくまでも「センシング&コントロール+Think」というコア技術を軸に何ができるかを追い求めていく。つまり、「人と機械の融和」を掲げて、人間を科学し、オートメーションをより進化させていくことを目指します。
 変化が激しい時代なので、変化に対応しようとすれば後手となって遅れてしまう。未来のイメージを持ったうえで、バックキャストでどう変えていくか、何が課題か、といった具合にやっていくことが重要です。もちろんまだ全部できてはいませんが、変化への「対応」ではなく、変化を「創造」をする。そういう存在でありたいのです。

(注4)「SINIC理論」は、創業者の立石一真氏が約半世紀前の1970年に構築し、国際未来学会で発表した未来予測。技術と社会と科学が相互に影響し合う中で「人間と機械との関係」がどのように進化するか、そのうねりを見通したもの。

 

 そのためには、変化を創造する人財をどう育成するかが重要です。特にグローバル人財の育成をどうされていますか。

  「コアポジション」「コア人財戦略」というのをやっていまして、グローバルでビジネスを進めるために必要となる主要なコアポジションを200ほど指定し、基本的には社長に人事権を集めて、一元的に管理する仕組みをつくっています。候補者は各ポジションに対して2人ずつ選び、400人くらいの候補者をリスト化しています。
 そこから抜擢した優秀な人材に対し、「グローバル・アカデミー」という場で、次の経営者層へと育てるための研修を続けています。彼らが、自国以外の、他事業の次世代リーダーたちとネットワークを持つことも狙いです。多くの執行役員がアカデミーの卒業生であり、そのうちの1人は中国人女性で、現地法人のトップを務めています。