いま、自動車業界はドラスティックに変わっています。そんな中、今年ホリバはドイツのFuelCon(車載電池や燃料電池の評価試験機を生産、販売する有力企業)を買収したのですが、同社が専門とする燃料電池技術を含めた最新鋭の研究を、UCIと共同で行うことにしました。もちろん、ホリバの「びわこ工場」とも連携していきます。
  またホリバは、ミシガン州のアナーバーにも開発拠点を持っていますが、米国会社を始動させた西海岸には、研究所的な機能がありませんでした。アメリカの中でも環境規制が最も厳しいカリフォルニア州は今後この分野の主導権を握るでしょうから、そこに研究所をつくることは大きなメリットがあります。
 私がいつも思うのは、「アカデミアとビジネスを、よい意味で絡ませる」ところにホリバの強みがあるということです。ホリバは創業時、京都大学の研究室と卒業生とともに立ち上げてきた会社でもあります。アカデミアと産業が連携するのは、アカデミアの堕落だと言う学者もいましたが、そうは思いません。いまや、そのアカデミア自体の競争力も落ちてきています。
 それに対して、ホリバはアメリカやドイツ、フランスのアカデミアと組んで展開しており、UCIはその最たるものです。日本のアカデミアも、企業との交流を急ぐべきだと、相当な危機感を持つようになってきました。

なぜホリバのM&Aは
成功確率が高いのか

 このところの御社のスピーディな展開力には驚かされます。特に、2012年からは戦略的な打ち手を連発されています(図表「堀場製作所のグローバルを舞台にした快進撃」を参照)。このような快進撃は、どのような戦略判断に基づいているのでしょうか。

 まず、M&Aについてお話ししましょう。買収先は、いずれもホリバが以前から一緒に仕事をしていた会社でした。ABX(フランスの血球計数装置メーカー:1996年に買収[現ホリバABX])とは技術提携を、ジョバンイボン(フランスの分光器メーカー:1997年に買収[現ホリバ・フランス])はホリバが日本での販売提携先でした。ドイツのカール・シェンク(自動車関連計測事業を2005年に買収)とは20年近く計測事業で組んでいました。

 最近買収したイギリスのマイラ(自動車のテストコースまで持つ、車両開発および試験エンジニアリング企業:2015年に買収[現ホリバマイラ])に関しては、おもしろいエピソードがあります。実はマイラのCEOは、ドイツのカール・シェンクの自動車計測事業の役員だった人で、ホリバが買収した後の5〜6年間、現地で経営を担ってくれていたのです。ところが、家庭の事情で彼の母国であるイギリスに帰国することになったのですが、当時、ホリバのイギリス事業は彼に経営してもらうほどの規模はなく、マイラのトップとしてヘッドハンティングされることになりました。競合会社でもなかったため、気持ちよく彼を送り出しました。