「ほんまもん」のものづくりに
向けた取り組み

 世界と向き合うため、今年「グローバル本部」を新設されました。「国内外の戦略策定を行う」と定義されています。それは、日本国内も含めた一体的な動きという意味ですか。
 そうです。いままでは、グローバル化というと「日本・アンド・others」でした。ですが、日本はすでに「others」の一つになりました。これから成長していく国は、中国やアジア諸国ですから、そこを連携させなければなりません。ホリバの場合、本社が持っていない技術を、フランスやイギリス、ドイツ、アメリカのグループ会社で持っています。つまり本社は、その分野ではマネジメントだけを輸出しているのです。現地の裁量で人を採用し、開発も現地のペースで行っています。
 いままでは、私や幹部がそれを個人的に確認していましたが、会社の規模的にもそれでは限界があり、専門部署をつくらないとマネジメントできなくなってきました。私自身もステップ・バイ・ステップで頑張ってきましたが、いよいよホリバが次のステージに上がるレベルまで到達したということです。
 そのためには、徹底的に組織や仕組み、対応を変えていかなければいけません。そこで、まずはトップから変えようと、副会長兼グループCOOの齊藤に全世界の運営を見てもらい、社長の足立には技術で勝つために本社の基礎技術・R&Dで期待をし、私はグループ全体の経営とバランスを見るという体制にしたのです。
 最近、アメリカのネバダ州リノに研究所を、ニュージャージー州にも工場をオープンさせました。これからまだ数カ国に工場を新設する予定ですが、投資する対象がまだまだあって、私は経営者として幸せだと思っています。
  このびわこ工場で実現したように、ものづくりが協力会社にシフトしていた状態から、協力会社とともにものづくりができる環境を実現し、ほんまもんで勝負していこうというのが、ホリバの目指すところです。
 高度なものづくりはそう簡単にコピーができないため、高い競争力があります。いまでも中国が困っていることは、ものづくりの現場に人がいないことです。性能とコストだけではなく、精緻な品質管理や現場で伝承された高度な技がカギとなるのです。半導体製造の流量制御機器を製造している阿蘇工場は、生産力で圧勝しています。高度なものづくり、これは本来、日本が一番強いはずです。

 ちなみにびわこ工場は、1ドル79円でも勝てる工場をつくろうと、構想から完成まで5年かけました。若手のプロジェクトチームに企画設計を託しましたが、私は「もうやめよう」と部屋を出て行ったことが3回ほどあります。
最初はゼネコンの設計案に多少色をつけたような提案で、「こんなもんは、やめよう」と。2回目は「おもしろいアイデアが何もないから、やめよう」と。3回目はよい案でしたが、「君らのハートが入っていないから、やめよう」と。そしてやっと出てきたのが、いまの工場の姿です。
 こうしたプロセスを経てつくり上げた工場は、何も言わなくても、すごく大事にするのですね。それは与えられたものではなく、苦労して自分たちで練り上げたものだからだと思います。
物事というものは、ゆるやかに継続的に上昇していくのではなく、たとえ停滞していたとしても、辛抱強く継続していれば、ある時、ポンとステップを上がることができるものです。ホリバのグローバル経営も、ようやく次のステップへ駆け上がる段階にきています。

 社是の「おもしろおかしく」は、社員にいかにオーナーズマインドを植え付けるかということでしょうか。
 社員の一人ひとりが自分の頭で考えることは、言い換えれば、オーナーズマインドを持つということです。言われたことを言われた通りに行うのではなく、社員や役員、海外まで含めて、すべての「ホリバリアン」が自分のこととして現場で考え行動し、目標達成に挑戦していく。その大切さをしっかりと理解してくれています。

 社員が失敗することもあるでしょうが、敗者復活戦の重要性を唱え、「人財再生」システムを用意されているそうですね。
 新入社員には「できるだけ若いうちに失敗してくれ」と言っていますね。「君らが失敗しても会社は潰れない。でも、君らが出世して、偉くなってから失敗すると、会社が潰れてしまう。だから、できる限り若いうちに失敗を体験して、失敗に対する嗅覚とセンスを養ってくれ」と話しています。
 チャレンジしたら8〜9割は失敗し、成功するのは1割しかありません。そして、失敗していないということは、チャレンジしていないということを意味します。そのため、「若いうちにたくさん失敗してくれ。ただ、致命的な失敗はするなよ」と少々難しいことも言っています。
 中堅社員でも同じです。むしろ、中堅レベルでもっとチャレンジしてほしいと思っています。会社の規模が大きくなり、業績が順調だと、徐々に感度やスピードが鈍ってきます。そこで、要となる人間を海外の子会社に送り込み、修羅場に身を置かせます。修羅場をどれだけ経験して闘ってきているかが重要です。上位に登用するかどうかは、その点を見ます。孫会社くらいまで転籍した人間を、本社に抜擢したケースもありますよ。
 このように、たとえ失敗したとしてもリターンマッチができる仕組みですが、そのためには、ある程度目立つことも必要です。しかし会社とは不思議なもので、風通しがよければ、フッとそのような社員は浮かび上がってくるものですね。もちろん目立つといってもスタンドプレーをする人間はいけませんし、そのような人間はやはり浮かび上がっても孤立して長く続きません。我々はフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを大切にしていますので、職場の雰囲気や会議の中でそれがおのずと見えてくるのです。