MBA経営では
会社は成長しない

 本誌は「21世紀にふさわしい日本的経営を再発明する」を編集コンセプトに掲げています。堀場さんは、日本企業が今後どうあるべきだと考えていますか。
 上場企業は四半期ごとに業績発表を義務付けられる一方で、近年、中長期的な経営をすべきだといわれたりもしています。サラリーマン社長にとっては非常に厳しい時代です。
  たとえば、先ほど述べたABXやジョバンイボンのように、7年も赤字を出していた会社を買収するとしましょう。しかし、4〜6年しか社長の座にいない人が、はたしてそのリスクを取れるでしょうか。さらに言えば、自分の代で成績を落としてまで、次の世代のために行動できるでしょうか。そのため、短期的な業績ばかりを追うようになった企業も少なくありません。
 もちろんサラリーマン社長であっても、40代後半や50代前半で早めに社長に就任し、少なくとも10年以上同じ人が経営することで、うまくいくケースもあります。ですが、「選択と集中」などと打ち出し、リストラを実施し、株価を上げ、ストックオプションを得るだけ得てCEOが去っていった会社の多くが失敗に終わっていますね。日本企業が盲目的にアメリカ的経営を取り入れることは、もういい加減やめたほうがいい。サラリーマン社長でも中長期的に経営ができていた時代の日本的経営を、あらためて見直すべきだと思います。

 最近堀場さんは、「半導体、自動車、環境、医学・バイオなどの技術が、今後どのように進化し、未来を形づくるか、ある程度想像がつくようになった」とおっしゃっています。どのようにアンテナを張っているのですか。
 ホリバには、自動車や半導体など、最先端を走っている企業とのコンタクトがある、ということです。ホリバが最先端をつくり出したわけでも、私が未来を予言しているわけでもありません。ホリバのお客様は、幸いなことに世界のトップ3%に入るような企業ばかりで、逆にその要求水準は非常に厳しく、最先端の技術や動きについていかなければ、放り出されてしまいます。
 むしろ、その一流企業に製品を使ってもらっている恩恵のほうが大きいといえます。そうなるまで何十年もかかりましたが、いまは単なるサプライヤーではなくて、多くの企業から「一緒にやりたい」と認められるようになりました。我々の技術やシステム製品を使うことで彼らも一流でいられると同時に、こちらも期待に応え続けることで一流であり続けられる。ですから、パートナーと言ってもらえるようになれるかどうかが重要です。
 ただし、うまくいっているからとか、儲かっているからと、先を見越した投資を止めたり、そこに安住して感度が鈍くなったりすれば、すぐにその関係は崩れてしまいます。
 逆に言えば、この厳しさが、ホリバに優秀な人財が集まってくる理由でもあります。ホリバでは、技術の一部分を担当するのではなく、全体を担当させてもらえ、かつ一流のお客様と付き合えて、産業に貢献できるからです。全体を俯瞰できる、ある意味で〝箱庭的な〟完成度がありますから、技術屋や研究者にとってはものすごい魅力となるはずです。一流の自動車メーカーからも優秀な人財が当社に来てもらえる理由は、そういった夢をかなえられるという背景があるからでしょう。

 社員にとっても、「ほんまもん」になれる場であるわけですね。
 その通りです。みんな、ほんまもんになりたい。それも端っこのほうじゃなくて、どうせやるなら舞台の真ん中にいたい。
 もちろん、そこに来ている観客も一流の方ばかりですから、我々は常に、おもしろおかしく、ほんまもんであり続ける必要があります。それこそがホリバの使命であり、私たちの喜びなのです。


  1. ●聞き手|森 健二 ●構成・まとめ|森 健二、宮田和美  ●撮影|松井 崇