税務の全体最適化に向けて
見える化の仕組みづくりを

 税務の最適化に向け、何をすべきですか。
神津:現状を見える化し、改善するための仕組みづくりが急務です。そのためには、大きく以下の3つの観点から税務を管理する体制と、それを可能とするためのインフラ整備が欠かせません。第1に、税務申告など必要な手続きのワークフローを管理する体制。第2に、属人的な知識を組織で共有するための体制。一種のデータベースのようなものを構築するイメージです。第3に、蓄積されたデータを分析するための体制です。こうした取り組みを進め、インフラを整備していく中で、外部のシステムベンダーとの連携が求められるケースもあるでしょう。いずれにしろ人的リソースには限りがある現状において、日本企業が税務の「見える化」を進めるためには、ITなどの、いわゆるタックステクノロジーの活用を加速する必要があるでしょう。

 税務部門の体制や組織はどうですか。
神津:専門性に関して言えば、日本企業は明らかに不足しています。専門性を重視した人材育成が求められますが、同時に組織面での課題も大きい。多くの日本企業では、経理部門の一部メンバーが税務を担当しています。これでは、知見の蓄積も進みません。全体的な観点では、すべての事業を俯瞰し統括する機能が必要です。欧米企業の間では、CTO(Chief Tax Officer)職を置く動きもあります。
角田:日本の大企業の傾向として、事業部ごとの部分最適になりがちなところがあるかもしれません。事業本部長をトップとする縦のラインが強いので、CTOのような機能をつくれば抵抗を受けることもあるでしょう。税務という横串での最適化を目指すには、経営トップのコミットメントが求められます。

 最後に、日本企業のマネジメント層に対するメッセージをいただけますか。
角田:日本企業がグローバル競争を勝ち抜き、日本の富を増やしてもらいたい。私たちは切にそう願っています。勝つための要素はさまざまですが、いまや税務を抜きに競争力向上を考えることはできない時代になろうとしています。こうした認識を少しでも多くの日本企業に広げていきたいと考えています。
神津:まずは見える化の仕組みをグローバルで整備することが重要です。取り組むテーマが明らかになり、組織内で目標を共有できた時、驚くほど大きな力を発揮できる。それが日本企業の強みだと思います。予測の難しい地政学的リスクに向き合わざるをえない時代、重要なテーマの一つが税務の最適化であることは間違いなく、そのためには税務の「見える化」は不可欠といえます。


  1. ●企画・制作:ダイヤモンドクォータリー編集部

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